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2022.06.23
もしもの時に困らない【大切な家族が亡くなった後の手続き】

連載第3回 「相続の際に必要な手続きは?」

 大切な人が亡くなったとき。失った悲しみでいっぱいの時でも、しなければならないことが次々に押し寄せてきます。

 

 さまざまな届け出や手続きは、故人の喪の明けないうちに済ませなければならないものも多く、スムーズに済ませたいもの。そこで今回は、『改訂3版 大切な家族が亡くなった後の手続き・届け出がすべてわかる本』から、最低限知っておきたい手続きについて、5回に分けて説明していきます。今回は「できれば早くしておきたい手続き」をテーマに、いくつかの例を取り上げながら説明します。

落ち着いたら早めに済ませたい手続きは?

  落ち着いて手続きを進められる時期になったら、今後の手続きをザッと見渡してみましょう。お金の受給や支払いに関わる手続き、先に期限がくる手続きから、順に手を付けていくようにしたいものです。

 

 健康保険や年金の制度で、今後、受けられる給付を確認しておきます。一方、手続きをするまで料金がかかり続けるのが、公共料金や、亡くなった方が加入していた有料サービスです。それぞれ支払い方法の変更や解約を進めます。遺言のあるなし、相続人の続柄と人数、相続財産の種類と額などは、今後の手続きに大きく影響します。できるだけ早く確認の手続きを始めたいものです。

遺言・相続人・相続財産の確認を始めるには

 後の手続きのためにも、遺言・相続人・相続財産の確認は早めにスタートしましょう。相続関係の手続きは、相続税の申告・納税の期限が10か月以内となっているので、ここに間に合えば大丈夫です。しかし、たとえば故人の確定申告には、相続人全員の連署と財産を分ける割合(相続分)などの記入が必要になります。この「準確定申告」の期限は4か月以内です。

 

 ほかにも「相続放棄」をする場合の申し立ては期限開始を知った時から3か月以内となっています。それには、負債を含めて相続財産の額と、相続人が分からなければなりません。

 

 これらの手続きは必要がないケースもあります。ですから、「手続きが不要」と確認できた場合は、遺言や相続人などの確認は、相続税の期限に合わせて進めることができます。

  しかし、手続きが必要になる可能性があるときは、4か月、3か月の期限に間に合わせて確認を進めることが必要です。それでなくても、遺言があるかないか、予想外の相続人がいないか、相続人の知らない相続財産はないのか、といった確認には時間がかかるものですから、早めにスタートしましょう。

こういう時の手続きは? 親と同居したいと思った時

 

 

 ご両親のどちらかが亡くなられて、残された親と同居を考えるケースも多いと思います。その際、注意したいのが住民票上の「世帯」の分け方です。

 国民健康保険料には、市町村によって世帯ごとにかかる「平等割」という負担があるため、世帯を1つにすると合計の保険料が安くなる場合があります。一方、65歳以上の方の介護保険料は、同一世帯の家族の所得で段階が変わることがあるので、一般に世帯を分けたほうが負担は軽くなるものです。

 

 親が高齢の場合、ほかにも医療費や介護サービス費の面でメリット・デメリットが生じることがあります。保険料は市区町村によって異なりますし、同居した後で、住民異動届による「世帯分離」「世帯合併」という手続きもできるので、一度調べて世帯の分け方を考えてみましょう。

 次回は「健康保険と年金で必要な手続き」について解説します。

出典『改訂3版 大切な人が亡くなった後の手続き・届け出がすべてわかる本』

本記事は、上記出典を再編集したものです。(新星出版社/室谷・向山)

イメージ画像 Shutterstock.com

大切な家族が亡くなった後の手続き・届け出がすべてわかる本 改訂3版
関根俊輔 監修/大曽根 佑一監修/関根圭一 監修(プロフィールは下記参照)
葬儀までの手続きは、だいたい葬儀屋さんにお任せできます。
でも、その後の手続きや届け出は自分でしなければなりません。
じつは、これらの手続きには、結構いろいろなものがあり、手間がかかります。

相続の手続きはもちろんのこと、亡くなられた方の確定申告も、代わりにしなければなりません。
また、健康保険や年金の手続きもあります。
亡くなられた方が持ち家をお持ちなら、世帯主の変更手続きが必要なケースもありますし、光熱費の支払先の変更やNHKの受信料の手続きなども必要です。

これらの中には、手続きや届け出をしなければ、損をしてしまうものが少なくありません。反対に、手続きや届け出をすることで、得するケースもあります。


本書はこれらの手続きや届け出の仕方を、記入例とともに、ていねいに解説しています。
また、これらの手続きをするために必要な書類を、役所などから入手しなければなりません。本書では、これらの入手方法にも触れています。

これらは一般に、税理士、司法書士、社会保険労務士など、何名かのプロに相談しなければなりません。
本書は監修者に、税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士の資格を持つ方をむかえています。

懇意にしている税理士や司法書などの専門家がいらっしゃるのでしたら、これらの手続きは彼らにお任せできます。
でも、そのような方々が周囲にいらっしゃらないのでしたら、本書はとても役立つ一冊になります。

※本書は2019年刊行の『新版 大切な家族がなった後の手続き・届け出がすべてわかる本』を最新の法律や手続きに沿って新しくしたものです。
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大曽根佑一(オオソネユウイチ)
司法書士、行政書士。
中央大学法学部法律学科卒。平成17年司法書士登録、平成26年行政書士登録。司法書士・行政書士大曽根佑一事務所代表。街の法律家として、相続発生以前の遺言書等による紛争予防アドバイスから、相続発生後の登記手続・相続財産管理業務に至るまで、相続にまつわる多岐の分野に積極的に取り組む。
関根俊輔(セキネシュンスケ)
税理士。
中央大学法学部法律学科卒。平成19年税理士登録、税理士法人ゼニックス・コンサルティング社員税理士。近年の高齢化に伴い「亡くなる前」の贈与や相続税の事前対策から、「亡くなった後」の遺産分割、二次相続に至るまで、財産の収益化・コンパクト化を重視した、遺族の暮らしの総合コンサルティングを提供している。
関根圭一(セキネケイイチ)
社会保険労務士、行政書士。30 年を超えるキャリアのなか、就業規則の作成、労使紛争の解決、給与計算実務や社会保険についての手続き、アドバイスをおこなう専門家。健康保険、労災保険、遺族年金の請求等、数千件の実務に対応した実績を持つ。
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