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2020.11.05
スペシャルインタビュー “プロへの道”

File No.5 【イラストレーター カモさん】
周りの人に褒められたことで、絵を描くことが大好きに

 大人にもお子さまにも大人気のイラストレーターとしてご活躍中のカモさん。雑誌や書籍をはじめとするさまざまな媒体に掲載されているイラストは、どれもみな柔らかく温かさを感じ、見るだけで気持ちがほっこりします。

 

 今回、カモさんにイラストレーターの道を選んだきっかけや、歩んできた今までの道のりについてお話しいただきました。

――当社から刊行しているカモさんの書籍はすでに3冊もありますが、どれもみな温かさを感じるタッチで、本当にかわいらしく、素敵な作品ばかりですね。

 

 ありがとうございます! どの本も思い入れのある本ですので、多くの方の手に取っていただけたらと思います。

 

📚カモさんの書籍

『みんな楽しい!カモさんのかわいいパネルシアター』

『CD-ROMつき 保育に役立つ!カモさんのイラストカードまるごとBOOK』

『かんたん!かわいい!カモさんの保育のイラスト12か月』

『かんたん!かわいい!カモさんの保育のイラスト12か月』より

――イラストレーターというと、子どものころから絵を描くのが大好きだった、というようなイメージがあるのですが、カモさんの場合はいかがでしたか?

 

 私の場合は、幼少期からお絵描きが大好きだった、という記憶はないのですが、小さいころから絵はよく描いていました。幼稚園の年長だったとき、たまたま描いた絵(横からみたコアラの絵でした)を見た先生に、「とっても上手ね!!」と褒められたことがきっかけで、次第に描くことが好きになっていきました。褒められるって、とっても大きなことなんだと、大人になったいまでも感じています。絵を描くことが好きになってからは、時間と描くスペースがあれば描いていた気がします。ノートやプリントの端とかに、ちょこちょこ描くのが好きでした。また、お友達に「描いて」といわれるのも嬉しかったです。
「ほめられる、よろこばれる→うれしい→自信」へとつながっていきました。

3歳頃に描いた絵

 小学校に入学してからは、絵を描く仕事に就きたい=画家になりたい、という気持ちが芽生え始めました。ちなみにその頃はまだ幼かったので、絵を描く職業といえば画家、という知識で、そのイメージはベレー帽をかぶっているピカソでした(笑)。

 

 そして小学校4年生のころ、担任の先生から、「イラストレーター」という職業があることを教えてもらい、そこから将来の夢として思い描くようになりました。

――たしかに子どものころ想像する画家の姿は、ベレー帽をかぶったピカソですね(笑)。そこから具体的にイラストレーターへの進路を目指すまでの過程はどのようなものだったのでしょうか。

 

 中学校・高校は公立の普通科へ進学しました。高校で美術部に入ったものの、油絵や彫刻といった内容を勉強していましたので、本格的にイラストの勉強を始めたのは、高校を卒業して入学した専門学校からでした。

 

 専門学校でデザイン科に進み、イラストレーションを専攻してからの2年間は、出される課題を毎日こなし、基礎をきっちり身に付けました。ですが、イラストレーターになりたい、と思っても、イラストレーターとして就職できる会社がなかったので、ゆくゆくはイラストレーターになりたい、という気持ちを抱えつつ、デザイン会社に就職し、グラフィックデザイナーとして仕事をし始めました。

 

 始めの1年間は成果が出せず苦しかったですが、ある大手企業からロゴデザインを依頼され、最終的に自分の作ったデザインが採用されたときは、本当に嬉しかったです。これでやっと会社に貢献できた、と胸をなでおろしました(笑)。デザインの仕事は楽しくて、会社の仲間もみないい人ばかり。その当時はまだブラック企業という言葉もない時代で(苦笑)、残業や徹夜をする日も多かったですが、充実していました。その一方でイラストレーターになる夢も抱き続けていました。

 

 そして勤務年数6年目を迎え、いよいよ今なら…、という時期に思い切って会社を辞め、フリーランスのイラストレーターとして仕事を始めることにしました。

デザイナー時代に送っていた公募作品

――いよいよイラストレーターとしての仕事に進まれたのですね! 独立して一番最初に手がけたことはどのようなことだったのでしょうか?

  

 その当時は、いまのようにSNSがさかんではなく、個人でホームページを持っている人も少ない、というような状況でした。そこで、まず初めに、今まで描きためてきた作品などを公表する場として、ホームページを作ることにしました。すると、そのホームページを見てくださった、ある雑誌の編集プロダクションの方から、雑誌のカットを描いてほしい、という初めての仕事が舞い込んできました。また、ある企業から、携帯電話の待ち受け画面の制作も依頼されたのです。

 この時は本当に嬉しかったです。ホームページを見てくれた人がいて、こうして仕事を依頼してくれた!! もう、両手を挙げて喜ぶほどの嬉しさでした。

 最初に仕事を依頼してくださった方が、編集プロダクションの方だったということで、そこから仕事が増えていきました。

 イラストを描くこと以外でも仕事の幅は広がっていき、カルチャー教室で教えたり、NHK  Eテレで放送している趣味の番組でイラストの描き方をお話したりする機会も増えました。多くの方に出会い、「絵を描きたいけれど、このようなところでつまずいてしまう」という悩みのポイントを知ることができるのは、私自身とても勉強になりますし、教室に通ってくださる方の年齢は、小学生のお子さまから70歳くらいのご年配の方までと大変幅広く、年齢を越えて一緒にイラストを描くという風景は、とても和やかで楽しいものです。

 

――着々とお仕事の幅を広げているカモさんですが、お仕事を続けていく中で、「きついなあ」と感じたりしたことはありますか?

 

 スケジュールが重なってしまい、そのやりくりが大変なことはありますが、かねてからなりたかったイラストレーターになれ、こうして仕事をもらえるようになった、ということで、特につらさを感じたことはありません。

 とはいえ、この仕事に就きたい! というパワーとエネルギーをもって一心に突き進み、夢がかなったわけですが、そこから先もひとつのことをずっと継続して続けていくというのはたやすいことではありません。

 仕事を長く継続していくためには、モチベーションを自ら維持していく必要があります。そのためには、仕事のどこか一部分でいいので、「楽しい」と思えることが大事だと私は思っています。

 

 また、自分のモットーとして、何かあると頭に浮かぶ言葉があります。それは「やりたいことがあるならば、やる努力をしなければならない」という言葉です。この言葉を思い出すと、気持ちが引き締まります。

 

――とても重みのある言葉ですね。自分のやりたいことを見つけ、すでにもう10年も続けていらっしゃるカモさんですが、これからやってみたいことなど、未来への構想は何かありますか?

 

  はい。私は今までやったことのないことに対する好奇心は旺盛なほうで、何でもやってみたい! と思いながらここまで進んできたのですが、仕事として携わった作品は、テーマを依頼されてから構想していくものなので、ゼロの地点から生み出し、創り上げたことがないんです。独立して10年が経過しましたし、今後は、それに対するチャレンジもしてみたいと思っています。

 

――それが目に見える形になるのが楽しみですね。最後に、これからカモさんのように絵の道を進みたいと思っている方々に向けて、絵が上手になるためのコツなどがあれば、教えてください。

 

 そうですね。いいな、と思ったものはとりあえず真似してみる、というのはいい方法だと思います。
最初は真似でも、ずっと描いていると自分の描きやすさとか、味とかが出てくるので、いろいろなものを吸収してオリジナルを築いていくといいのではと思います。

 

ーーアドバイス、ありがとうございます。これからも素敵な作品を作り続けてくださいね。改めて、本日はありがとうございました。

 

 ありがとうございます。頑張ります!

カモさん語録

子どもの頃に褒められたことは幼心にも大きな影響があった。褒める、ということはとても大事なことだ

 

◆「仕事を継続していくにあたり、何かあると頭に浮かぶ1つの言葉、それは「やりたいことがあるならば、やる努力をしなければならない」という言葉である」

 

◆「モチベーションを維持していくためには、仕事のどこか一部分でいいので、「楽しい」と思えることが重要である」

(取材・文 向山邦余)

カモ
カモ(カモ)
山口県生まれ、埼玉県育ち、現在東京都在住。
広告制作会社でグラフィックデザイナーとして勤務ののちイラストレーター(デザイナー)としてフリーで活動中。

著書に『ボールペンでかんたん!プチかわいいイラストが描ける本』(メイツ出版)、『カモさんのイラストカードまるごとBOOK』(小社刊)ほか多数。2017年度から、保育雑誌『Pot』(チャイルド本社)の表紙イラストを担当している。「NHK Eテレ趣味どきっ!」「NHK Eテレ趣味Do楽」では講師として出演。日本だけでなくインドネシアでもイラスト講座やイベントを開催している。

👉オフィシャルサイト
👉Youtubeチャンネル【illustratorカモtube】
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