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2020.08.20

木村一基先生が教える!
はじめての将棋入門
【第3回 駒の逃げ方・成り方】

木村一基(キムラカズキ)
1973年6月23日生まれ。千葉県出身。97年に四段に昇段しプロデビュー。2002年に新人王に輝く。2007年、A級八段に昇級昇段後、2017年、九段昇段。2019年、第60期王位戦タイトル獲得。千駄ヶ谷の受け師」と呼ばれている。

 みなさん、将棋の世界にようこそいらっしゃいました。

 将棋はとても楽しいゲームです。コマの動かし方といくつかのルールを覚えれば、だれでもすぐに将棋を楽しむことができます。

 今回、私が監修を務めた書籍『はじめてでもたのしめる かんたんマスター将棋』から、将棋のルールと動かし方、それぞれの駒についての考え方など、基本的な内容について解説していきます。今回は「駒の逃げ方・成り方」についてです。ぜひこの夏に、トライしてみてください。

駒を逃げよう

 相手の駒を取ることも大切ですが、自分の駒を取られないようにすることも同じように大切なことです。自分の駒を取られてしまわないように上手に逃げましょう。

 下の第1図は相手が☖8七歩成と進めてきたところです。

 8七とを取ってしまうことができれば一番いいのですが、第1図では残念ながら「と」を取ることができません。

第1図

 このまま放っておくと、相手は☖8八と(第2図)と、角を取ってくるでしょう。こうなると大切な角を取られてしまい、駒損してしまいます。

 角を取られないためにはどうすればいいでしょうか。こんなときは角を取られないように逃げる手を考えてみましょう。

第2図

 第1図から角を7七や9七へ逃げても「と」は金と同じ動きができるので横に進められて、やはり大切な角を「と」で取られてしまいます(第3図)。これも駒損で失敗です。

第3図

 第1図からは☗7九角(第4図)と「と」の利いていない場所へ逃げるのがいい手です。第4図のように逃げれば大切な角を取られず駒損をまぬがれました。

第4図
問1 

 このままだと☖5六銀と歩を取られてしまいます。取られないよう逃げてください。

 

問1 答え

 ☗5五歩と進めれば、歩は取られません。銀と歩の動き方を思い出してください。

問2

 このままでは桂がピンチです。取られないように逃げてください。

問2 答え

 ☗2五桂と逃げれば桂は取られません。☗4五桂と逃げるのは失敗で、☖同歩と取られてしまいます。桂の動き方を思い出しましょう。

問3

 角が取られてしまいそうです。逃げてください。 

問3 答え

 ☗7七角と逃げれば、大切な角は取られません。

問4

 次に☖2三竜と、「と」を取られそうです。「と」を逃げてください。

問4 答え

 ☗2二と、が相手に取られない唯一の場所。「と」を逃げながら、今度は逆に相手の桂か香が取れそうです。

問5

 相手は☖1三竜と馬を取る手を狙っています。相手の竜と角に注意して、馬を取られないように逃げてください。

 

問5 答え

 ただで取られないためには☗1二馬と逃げるよりありません。ほかの逃げ場所は竜か角の利きに入ってしまい、取られてしまいます。

駒を成ろう

 敵陣に入ったり、敵陣内で動いたりして、駒は「成る」ことができ、パワーアップします。入門者は「成る」ことを忘れてしまいがちなので注意して指しましょう。

 玉と金を除き、駒はすべて「成る」ことができます。「飛・角」が成ると周囲に隙のない駒になり、「銀・桂・香・歩」が成ると「金」と同じ動きができるようになります。

 「成る」か「成らない」かは選ぶことができ、成った場合は「成(なり)」、成らない場合は「不成(ならず)」と表記します。

 

(例)… 成ったとき⇒☗2二銀成 成らないとき⇒☗2二銀不成

第1図

 第1図は角と銀の協力で、相手の玉をもう少しで仕留めることができそうな場面です。ここからどう指すのがいいでしょうか。

 慣れていないと、成ることを忘れて☗2二銀不成(失敗図1)と進めてしまう人が結構多いのです。

失敗図1

 失敗図1から、後手が、☖同玉と銀を取ってくれれば角で玉を取ることができます。しかし、相手もそう簡単には勝たせてくれません。この場合、後手に、☖1二玉(または☖3二玉)と逃げられてしまいます。

失敗図2

 第1図でのいい手は、☗2二銀成(正解図)です。銀が成ったので、成銀となり、金の動きになりました。するとどうでしょう。正解図から相手がどこに玉を逃げても成銀で玉を取ることができます。また☖同玉と成銀を取ってきても☗同角と玉を取ることができます。

 相手がどう指してきても、相手の玉を取ることができるので、これで勝ちとなるわけです。正解図のように、相手がどうやっても玉が取れる状態を「詰み」といいます。

 

正解図
問1

 香を取られないように成ってください。

問1 答え

 ☗1二香成と「成」で進めて、飛か角のどちらかが取れる形になります。香が成れるマスは3カ所ありますが、1一や1三で成ると逆に取られてしまいます。

問2

 飛と角の両取りをかけてください。

問2 答え

 3三銀は「敵陣にいる銀」なので、動くと成ることができます。☗2四銀成と「引き成る」のがいい手で、銀を金の動きに変えて、飛と角の両取りになりました。成らないで☗2四銀不成だと、飛取りにしかなりません。

問3

 角を取られないように成ってください。

問3 答え

 1三角は「敵陣にいる駒」なので、動くときに成ることができます。取られない場所は2四のマスで、☗2四角成と「成る」のが正解です。ほかの場所に成ると金か銀に取られてしまいます。

駒取りをかけよう

 「次に駒を取りますよ」という手は「駒取をかける」あるいは「駒に当たりをかける」などといわれます。駒を取るためにも「駒取りをかける手」に慣れてください。

 将棋は相手の駒を取るゲームです。そのためには、こちらから積極的に、駒が取れるように自分の駒を進め、相手に仕掛けていく必要があります。

 第1図を見てください。2一に竜がいますが、このままでは相手の駒を取ることはできません。「当たり(次に駒を取りますよという状態)になっていないからです。

 そこで、駒を取るために「当たり」になる手を考えましょう。☗2四竜や☗5一竜など、当たりをかける手はいろいろありますが、この場合は☗3二竜がいい手です。金と銀の両当たりになるので、次はどちらかの駒を取ることができます。

第1図

 次に第2図を見てください。

相手の飛か角を取りたいのですが、「☖5五角や☖3七飛成と来てくれれば取れるのにな」と待っていても、相手がよほどうっかりしないかぎりはそう来てくれないでしょう。相手の駒を取りたいときは、積極的に駒に当たりをかけていきます。

第2図

 第2図からは☗4五銀(第3図)と出る手がいい手になります。これで飛と角の両取りになっているので、飛が逃げれば角が取れますし、角が逃げれば飛が取れます。相手は両方一度には逃げられません。

 なお、第2図から☗3五銀(失敗図)と出て両取りをかけるのは同じようでもいけません。今度は逆に☖3五同飛(または☖3五同角)と銀を取られてしまいます。

 当たりをかける場合は、当たりをかける駒がタダで取られないように注意する必要があります。

第3図
失敗図
問1  

持ち駒を使って、角に当たりをかけます。

問1 答え

 角の頭は、利きがない弱点です。角頭の弱点を歩で攻めるのがいい手で、☗2三歩と角取りに打てば、もう角は逃げられません。

問2

 相手の銀は逃げ場を失っています。さあ、どうする?

問2 答え

 ☗3七桂と銀取りにはねるのがいい手です。相手の銀がどこに逃げても取ることができるのを確認してください。

問3

 持ち駒の角を使って「王手飛取り」をかけてください。

問3 答え

 ☗5五角が「王手飛取り」のいい手です。相手は玉を逃げるよりなく、☗9一角成と飛を取ることができます。

問4

 持ち駒の角を使って、飛と金をいっぺんに攻めます。

問4 答え

 ☗7一角が「飛取り」と「金取り」の両方を兼ねたいい手です。これで次は飛か金のどちらかをタダ取りすることができます。

問5

 竜で「王手馬取り」をかける手があります。

問5 答え

 竜を斜め後ろに引く☗1二竜が素晴らしい手です。この手が「王手馬取り」になるため、馬をタダで取ることができます。

 いかがでしたか? さらに解きながらマスターしたい方は、こちらへ。

次回は、得する駒・損する駒について解説します。お楽しみに!

 

※イラスト/井塚剛

 

※本記事は、下記出典を再編集したものです。(新星出版社/向山)

かんたんマスター将棋
(電子版取扱い中)
木村一基監修(プロフィールは下記参照)
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1973年6月23日生まれ。千葉県出身。97年に四段に昇段しプロデビュー。2002年に新人王に輝く。2007年、A級八段に昇級昇段後、2017年、九段昇段。2019年、第60期王位戦タイトル獲得。千駄ヶ谷の受け師」と呼ばれている。

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