2020.11.12

「やる気スイッチ」を押すには?
【最新科学が解き明かす脳のふしぎ②】

 勉強させたい子どもを持つ親も、向かわなければならない課題を先延ばしにしている大人も、押せば意欲が出る「やる気スイッチ」があればどれほどよいかと思っている方は多いのではないでしょうか。

 今回は最新の知見をふまえ、「やる気スイッチ」を押すにはどのようしたらいいのか? その方法ついて解説します。

意欲を引き出すドーパミン

 やる気が出るきっかけは、「動機づけ(モチベーション)」と呼ばれる欲求です。

 たとえば、私たちが毎日当たり前のようにとっている食事も、“食べたい”という欲求である食欲がなければ、自分から食べ物を調達したり、料理をしたりすることはありません。そして、そのモチベーションを保たせるスイッチを押すのが、神経伝達物質「ドーパミン」です。

 

 欲求に従って食べて食欲を満たすと、脳は生命維持にとって必要な、良いことが起きた(必要な欲求が満たされた)と判断し、中脳の腹側被蓋野(ふくそくひがいや)という部分からドーパミンを放出します。

 

 ドーパミンは、食事に限らず、良いことをしたと判断されると放出され、同時に、気持ちよさももたらします。ヒトは、良いことの「報酬」としてもたらされるこの快感を再度得るために、また良いことをするようになります。このドーパミンがやる気スイッチをオンにする役目を果たしているのです。

ドーパミンってどんなもの?

 ここで少しドーパミンについて解説します。ドーパミンは、動物が生存に必要な条件が満たされた場合に放出され、気持ちよさや幸福感といった快感をもたらします。それによって、生命を維持するために最適な行動を促すことができ、快感はその報酬に相当します。脳には、「快感回路」とも呼ばれる、こうした「報酬系」が備わっているのです。

 

 報酬系の基本的なしくみは、回虫など原始的な構造の線虫もヒトもあまり変わりません。しかし、ヒトの場合、報酬系は「記憶」などと絡み合います。私たちは“気持ちいい”と感じる行動を記憶し、過去の経験から気持ちよさをもたらす経験がランク付けされ、報酬系がより刺激される体験を求めるようになるのです。

スイッチを入れるには?

 それでは、私たちはどのようにしたらやる気のスイッチを入れることができるのでしょう?

 

 たとえば、子どもが勉強する習慣を強化したいなら、勉強するとドーパミンが出るようにすればよいということになります。

 

 

 勉強すると良いことがあるから、また勉強したくなるという循環をつくることがポイントです。そのためにはまず、勉強をしたいと思うきっかけをつくり、勉強することで、ほめられたり、認められたりして「良いこと」だと脳が判断するような環境づくりをすることがやる気スイッチを押すために必要なのかもしれません。

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※イラスト・写真/  shutterstock

※本記事は、下記出典をもとに、一部加筆し、再編集したものです。(新星出版社/三井)

脳と心のしくみ
池谷裕二 監修(プロフィールは下記参照)
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池谷裕二(イケガヤユウジ)
東京大学大学院薬学系研究科薬品作用学教室 教授。1970年静岡県藤枝市生まれ。研究テーマは「脳の可塑性の探求」(脳自身が作り出す脳の変化について)。特に記憶をつかさどる海馬の神経回路に内在する「可塑性」のメカニズム解明に向け、細胞生物学および生理学的観点からアプローチしている。
『進化しすぎた脳―中高生と語る「大脳生理学」の最前線』(講談社)、『単純な脳、複雑な「私」』(朝日出版社)、『海馬―脳は疲れない』(新潮社)など著書多数。

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