古文・漢文講師。
リクルート運営「スタディサプリ」古文・漢文担当。大阪府立千里高校→大阪教育大学・教養学科芸術音楽コースピアノ科卒。新卒で予備校講師となり、映像授業も担当。
まずは古文の魅力をお伝えします
私たちが日常的に使っている言葉の中には、奈良時代や平安時代から用いられている言葉がたくさんあります。
例えば、「あふせ(逢瀬(おうせ))」や「ほだす(絆す)」など。さらに、古文単語には「うたかた」や「うつつ」など、耳にしたことがある単語も少なくありません。古文単語は、知れば知るほど親しみも深みも増していくのです。
古文単語には、「やんごとなし」を使った「やんごとなき事情」、「かくる(隠る)」を使った「お隠れになる」など、現代でも使える便利な言い回しがたくさんあります。これらを日常会話に取り入れると、語彙が豊富で知的な印象に。さらに古文単語には、独特のニュアンスがあるため、より豊かな会話が楽しめることでしょう。
今回は、状態や態度をあらわす単語をいくつかご紹介します。次単語の意味、あなたはわかりますか?
現代語訳
①気味が悪い ②大げさだ
「おどろおどろし」のイメージは、「ヒュードロドロドロ」などのお化けが登場するときの「気味が悪い」効果音。でも、この効果音、たいして怖くないものに用いると「大げさ」ですね。このくだりで、2つの意味を覚えましょう。
数年前に別れた彼から、突然ラインが来ておどろおどろし。
⇒数年前に別れた彼から、突然ラインが来て気味が悪い。
だいぶ前に別れた彼から着信があると「ハッ!」としますよね。「え? 何??」と。恐れつつラインを見て、それが長文であれば、なおさら「何事?!」とかまえてしまいますよね。そんな少し不気味な恐ろしい感じが「おどろおどろし」です。
30歳の誕生日に別れを告げられて、おどろおどろしく泣いた。
⇒30歳の誕生日に別れを告げられて、大げさに泣いた。
よりによって誕生日に、しかも30歳。フラれて泣くのは大げさではない!と感じる人もいるかも。その場合は、「騒々しく泣く」と訳しましょう。ものすごく泣いたという意味です。
現代語訳
①捨ててはおけない ②格別だ ③高貴だ
「やんごとなし」は、各国王室の人々など、「とても高貴」なイメージにぴったりの単語です。大事すぎてお世話をやめることができない、格別で捨ててはおけないような高貴な方々を指します。
一般家庭育ちだったが、やんごとなき人と結婚した。
⇒一般家庭育ちだったが、このうえなく高貴な人と結婚した。
この場合の結婚相手は、王室、皇室の方と想像しましょう。海外でも、国王や王子と結婚した女優さんがいらっしゃいますね。
「三ツ星レストラン」というやんごとなき評判を得た。
⇒「三ツ星レストラン」という並々ならぬ評判を得た。
この「やんごとなし」は「格別な」の意味。「格別な評判」でももちろんよいですし、このように「並々ならぬ」と訳してもOK。
古文単語を学べば、語感が美しく、心に響く言葉に数多く出会うことができます。ぜひ覚えてみてくださいね。
出典 『古文単語キャラ図鑑』イラスト/上田惣子
本記事は、上記出典を再編集したものです。(新星出版社/神前・向山)
リクルート運営「スタディサプリ」古文・漢文担当/『岡本梨奈の1冊読むだけで古文の読み方&解き方が面白いほど身につく本』『岡本梨奈の古文ポラリス1・2』(KADOKAWA)など。
大阪府立千里高校→大阪教育大学・教養学科芸術音楽コースピアノ科卒。新卒で予備校講師となり、映像授業も担当。