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2023.02.08
確定申告までに確認しておきたい!

経費で落ちる領収書・レシートの基準とポイント

 2~3月は確定申告の時期。領収書やレシートが経費で落とせるかどうか、悩んでいる個人事業主や会社経営者の方は多いでしょう。領収書やレシートをもれなく、たくさん集めて保存して、経費で落としたほうがいいのはわかっているけれど、実際に経費で落ちるのか落ちないのか、グレーゾーンにある領収書やレシートは多いものです。また、2023年10月からインボイス制度が開始されるので、注意が必要です。

 そこで今回は、『改訂版 経費で落ちる領収書・レシートがぜんぶわかる本』より、経費で落ちる基準やポイントを解説します。個人事業主、フリーランス、副業者、1人で会社を経営されている方必読です!

「経費」ってどうして大切なの?

A.売上に税金がかかるのではないから。

 

 確定申告を経験したことがある人は、身につまされてわかると思いますが、「経費」は大事です。なぜなら、確定した売上の金額に、そのまま税金がかかるわけではないからです。課税の対象となるのは、売上の金額から、売り上げのために使った費用、すなわち経費の金額が差し引いた金額なのです。この税金の計算のもとになる金額を、税金の世界では「所得」という言葉を使います。

 

 

 上の図の通り、税金の計算のもとになる所得の額は、収入(売上)から経費を差し引いた額です。つまり、経費で落とせる領収書やレシートがたくさんあって、経費の額が多くなるほど、同じ売上でも所得は少なくなり、税金も少なくてすむのです。

税金は所得税、法人税だけではない

 所得にかかる税金は、個人事業主なら所得税、会社なら法人税と思っている人がいるかもしれません。しかし、それだけではないのです。

 個人事業主の場合、所得税のほかに、個人住民税の一部(所得割という)や、国民健康保険に加入していればその保険料の一部、また業種によっては個人事業税の納税も必要です。

 一方、会社の場合は、法人税に加えて、法人住民税の一部や、法人事業税の一部などがあります。

 経費として落としてトクをするのではなく、落とさないとソンをするのです。

基本的に、仕事で使った領収書は経費で落とせる?

A.落とせます。

 

 仕事のために使ったお金は、仕事で得たお金から差し引けるのが基本です。領収書がそれを証明してくれます。

 しかし、経費になるかならないかは領収書自体の問題ではなく、その支払いが「業務上の費用か」「どこまでが業務上の費用か」がポイントになります。

宛名が「上様」になっている領収書でもOK?

A.好ましくありませんが、大丈夫でしょう。

 

 手書きの領収書には、受け取る側の個人名や会社名を、発行する側に書いてもらうのが原則です。宛名「上様」や、宛名なしの領収書は、好ましくないとはいえますが、金額が少額の場合は慣習的に認められているので大丈夫です。

 ただ金額が高額だと、税務署は「反面調査」といって、納税者ではなく、取引の相手側に調査が入ります。反面調査でウラが取れれば、経費になりますが、相手側に記録が残っていないと、経費として認められない可能性もあります。

宛名なしのレシートでも大丈夫

 宛名「上様」や宛名なしの領収書がダメといえないのは、一般的なレジロールのレシートにも受け取った人の名前がないからでしょう。宛名なしをダメにしてしまうと、ほとんどのレシートが経費で落とせなくなってしまいます。

領収書のない出費はどうすれば経費になる?

A.「自分の足どりを残しておく」ことで経費にできます。

 

 領収書が「ある」か「ない」かが、経費で「落とせる」か「落とせない」かを決めるわけではありません。

 自動販売機での購入や、冠婚葬祭の祝儀・香典など、そもそも領収書をもらいたくても、もらえない場合があります。

 領収書がないなら、別のもので経費を使ったことを証明する方法を考えましょう。例えば出金伝票や振替伝票を使う方法があります。これらの伝票を使うと、金額、日付、内容などをもれなく記録できます。取引などの事実を証明する証拠を「証憑(しょうひょう)といいますが、この場合は出金伝票などが証憑になります。

証明できる資料があればベスト

 出金伝票などに記入した際、個人で使用した経費ではないこと・架空計上ではないことを証明できるようにしておくとベストです。

 そのためには、招待状・礼状の保管やスケジュール帳や日記・日誌などで「自分の足どりを残しておく」ようにします。

経費で落とす最大のポイントは何?

A.領収書に「ストーリー」が見えるか、残せるか。

 

・どこかの誰かが同じ経費を以前に落としていた実績がある

・同じ経費の支出が、以前あった税務調査で大丈夫だった

 

 これらは根拠になりません。経費として落とした人の仕事内容や、それを支出したときの状況が、これから落とそうとする経費と同じとは限らないからです。また、以前の税務調査では、その支出を見ていなかった可能性もあります。

  結局のところ、領収書を経費で落とす最大のポイントは、「その支出にストーリーがあるか、残せるか」です。

 その経費を支出した理由が、自分の事業で収入を得るためだったというストーリー、事業活動で必要だったというストーリーです。

 今回は、『改訂版 経費で落ちる領収書・レシートがぜんぶわかる本』から経費で落ちる基準やポイントを解説しました。総論として、「その支出にストーリーがあるか、残せるか」がポイントでした。本書では、最新の法律に対応しており、今回紹介した場面以外の具体的な事例や制度を詳しく解説しています。ぜひお手にとってみてください。

 

出典 『改訂版 経費で落ちる領収書・レシートがぜんぶわかる本』

 

本記事は、上記出典を再編集したものです。(新星出版社/内園)

写真画像 shutterstock

改訂版 経費で落ちる領収書・レシートがぜんぶわかる本
関根俊輔(セキネシュンスケ)著
個人事業主、フリーランサー、一人会社の社長、社員数名の会社の社長、必見!
あなたは、税金を払いすぎています!
本書を読めば、経費にできるモノ、できないモノがわかります!

【経費にできるモノがわかります!】
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事業に必要なことをきちんと証明することができれば、それはすべて経費になります。
このことを知らずに、経費として処理できないモノが増え、結果、税金を多く払っている人は少なくありません。
本書では、どうすれば事業に必要なことを証明でき、経費として認められるかがわかります。

【インボイス制度にも対応!】
2023年10月からインボイス制度が正式にスタートします。

インボイス制度が始まると、消費税の納税をしなくていい、免税事業者でいることがむずかしくなります。
本書は、このインボイス制度が開始された後での節税方法もわかります。インボイス制度への対応の仕方も解説しています。

【迷いそうな事例が満載!】
本書では、経費にできるのか、できないのか、按分するならどこまでなら許されるか? など、迷いそうな事例を多数挙げています。
たとえば、
 ・SuicaやPASMOなどを使ったときの注意点
 ・自宅を事業で使ったときに突っ込まれない按分
 ・クレジットカードを使ったときの落とし穴
 ・ボツになった企画の経費
 ・海外出張と海外旅行が交じっているとき
 ・キャバクラ、風俗店などに行ったとき
 ・領収書のない経費
 ・インボイス制度への効果的な対応
  などの対応の仕方がわかります。
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関根俊輔(セキネシュンスケ)
税理士。
中央大学法学部法律学科卒。平成19年税理士登録、税理士法人ゼニックス・コンサルティング社員税理士。近年の高齢化に伴い「亡くなる前」の贈与や相続税の事前対策から、「亡くなった後」の遺産分割、二次相続に至るまで、財産の収益化・コンパクト化を重視した、遺族の暮らしの総合コンサルティングを提供している。
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