酷暑続きの夏が終わったと思ったら、寒暖の差が激しい今日この頃。疲れた体のメンテナンスをどのようにしたらいいかお悩みの方は多いでしょう。そこでお勧めなのが、いつもの食材で楽にできる漢方。漢方というと、特別な食材を使うのではないかと思うかもしれませんが、日ごろ私たちが食べている食材を、普段のお料理として取り入れることができるのです。そこで今回は、『いつもの食材でゆるラク漢方レシピ213』(櫻井大典 監修)より、牛肉を使ったレシピを紹介します。手軽につくれるのでぜひ試してみてはいかがでしょうか。
体力が落ちて疲れやすい、肩がこる、足腰が弱っているなどの悩みがある人は、カラダの冷えが原因の場合があります。そんなときにおすすめの食材が牛肉です。
牛肉には「気」と「血」の両方を補う力があり、「脾」と「胃」の機能を高めてくれます。冷えきったカラダを温めて元気にするほか、骨や筋肉を強くして弱った足腰も丈夫にします。冷えからくる貧血や月経痛にも効果的です。
牛肉の部位はできるだけ赤身を選びます。また肉類全般にいえますが、下痢や軟便が続いているときは少しずつ食べるようにしましょう。
●牛切り落とし肉…180g
●ブロッコリー…1/2株
●スライスアーモンド…10g
●サラダ油…大さじ1
●酒…大さじ1
A しょうゆ…小さじ2
A カレー粉…小さじ1/2
●こしょう…少々
① ブロッコリーは小房に分け、フライパンに入れる。塩少々、水大さじ3(各分量外)、サラダ油小さじ1を加えて中火にかけ、ふたをして3分蒸しゆでにし、一度取り出す。
② 同じフライパンに残りのサラダ油を中火で熱し、牛肉を炒める。肉の色が変わったら、①を戻し入れて酒をふって炒める。
③ 汁けが少しとんだらA、アーモンドを加えて全体に炒め合わせる。
日本でいう“漢方”とは、中国から伝わった生薬学を長い時間をかけて日本独自に発展させたものです。中国伝統医学の略である“中医学”とは、唯物論と陰陽五行説の考えから発展した医学です。厳密にいうと“漢方”と違いがありますが、ここでは“中医学”の理論も含めて、便宜上“漢方”という言葉を使用しています。
病気というほどではないけれど、なんとなく体調がイマイチ。元気が出ず、気持ちもふさぎ込みがち。「まさにそう!」と思い当たった人はいませんか。その、なんとなく体調がすぐれない状態を漢方では“未病”といいます。そのままにして病気ヘ悪化させる前に、日々の食事や生習活慣を見直すことで未病を防いでいきます。
“食養生”ということばをご存じでしょうか。“食養生”とは健康のために、栄養や消化など日々の食事を意議することです。私たちのカラダは、毎日口にするものによって作られています。食べるものをいい加減にすませれば、日々の体調に直結し、不調を招く原因になってしまいます。
漢方では大きく6つの体質(気虚・気滞・血虚・瘀血・陰虚・痰湿)に分けられます。同じ不調でも体質によっておすすめの食材や食べ方が異なることもあります。症状や食生活、生活習慣から自分がどの体質であるかを知ることから始めましょう。症状と体質が深く結びついていると考え、自分に合った方法で不調を改善していきます。
漢方では、私たちのカラダは「気」「血」「水」の3つの要素によって構成されると考えられています。
「気」は活動するための生命エネルギー、「血」は栄養をカラダ全体に行き渡らせる赤い液体、「水」は血液以外の体液すべてを指しており、“カラダを支える3本の大黒柱”です。食べたものや生活習慣に左右されやすく、このバランスがくずれるといろいろな不調が出て、病気になりやすくなります。
目に見えない人間の活動の源です。カラダのすみずみに栄養を与える、臓器を動かす、呼吸や体温などの生命活動を維持する、外敵からカラダを守るなど、重要な役割を果たしています。
血管内を流れる赤く栄養のある水分のこと。全身に栄養を行き渡らせ、「心」にも栄養を届けます。物を見たりつかんだり、歩いたりできるものも「血」が巡っているからです。
津液(しんえき)ともいわれ、「血」以外の汗や涙、唾液、胃液、リンパ液を含む体液のこと。体内の水分バランスを調整するのが主な働き。不足すると関節が動かなくなったり、歩けなくなったりします。
漢方において、すべての食材には性質や作用があるといわれ、「五味」や「五性」に分けられます。「五臓」とも深い関係があり、それを養う食材を食べることで弱っている部分を元気にすることができます。
「五臓六腑」ということばを聞いたことがありますか?「五臓」とは、私たちが生きていくために必要な働きや機能を「肝」「心」「脾」「肺」「腎」の5つに分類したものです。「六腑」とは「胆」「小腸」「胃」「大腸」「膀胱」「三焦」のことで、「肝と胆」「心と小腸」「脾と胃」「肺と大腸」「腎と膀胱」のようにそれぞれ深い関係があります。「三焦」は現代医学でいうとリンパ管のような働きをし、五臓すべてとつながっています。五臓のどれかひとつにでも弱りがあるとカラダにいろいろな不調があらわれます。
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出典『いつもの食材でゆるラク漢方レシピ213』
料理写真 松久幸太郎
イラスト 村田エリー
本記事は、上記出典を再編集したものです。(新星出版社/向山)
漢方と聞くと「なんだかむずかしそう…」と思うかもしれません。
けれど、じつは私たちの日々の生活のなかに漢方の考えや知恵は多く存在しています。
たとえば、すいかには熱を冷ましたり潤いを補ったりする作用があります。暑くて汗をよくかく夏にすいかを欲するのは、最適な食材だからです。
こうして考えると、少しむずかしそうな“漢方”を身近に感じませんか?
この本で紹介するレシピには、特別な食材や調理法は一切ありません!
キャベツや大根、玉ねぎ、鶏肉、鮭など、スーパーで手に入る身近な68食材でかんたんに作れるものばかり。日々のごはんだからこそカラダにいいものをと思う方、夕飯のメニューに悩む方、どんな人にとっても役立つ1冊です。
巻末の【症状別さくいん】では、「冷え」「疲れ」など具体的な不調から、その症状に適した食材やレシピを探せるので便利です。
主な著書・監修に『漢方的おうち健診-顔をみるだけで不調と養生法がわかる』(学研プラス)、『こころとからだに効く!櫻井大典先生のゆるゆる漢方生活』(ワニブックス)、『つぶやき養生』(幻冬舎)、『まいにち漢方』(ナツメ社)、『体をおいしくととのえる!食べる漢方』(マガジンハウス)など多数。
公式Twitter @ PandaKanpo