Fun-Life! 編集室より

2023.04.26

【👑 2023年 本屋大賞発表会に行ってみた!】&【 🎤 発起人 杉江由次さんに聞いた、本屋大賞への想い】

 2023年4月12日、全国の書店員さんが一番売りたい本を選ぶ「本屋大賞」🔍の発表会が明治記念館で開催されたので、どんな様子なのか観に行きました。😊

 文芸書を刊行している出版社にとって、本屋大賞はお祭りのような一大イベント。今回は4年ぶりの会場での開催とあって、ホールには多くの人で賑わっていました。熱気に包まれた会場内には、多くの報道陣の姿もありました。 

 

 まずはじめに発表されたのは、翻訳小説部門。『われら闇より天を見る』(クリス・ウィタカー 著/鈴木恵 訳 早川書房刊)が第1位に選ばれ、翻訳家の鈴木恵さんが会場でスピーチをされました。

 次に、発表されたのは、【発掘部門】超発掘本! です。こちらは、田辺聖子さんの『おちくぼ姫』(角川書店)が選ばれました。

 そして大賞の発表。今年は、凪良ゆうさんの『汝、星のごとく』(講談社)が大賞に輝きました。凪良さんは2020年に「流浪の月」でも大賞を受賞されています。「前回は、コロナによる緊急事態宣言と重なり、会場にすらたどり着けなかった……」と語り始める凪良さんを目の前に、多くの方がもらい泣き。会場にいる皆で感動を分かち合う、心温まる発表会となりました。

スピーチをする凪良ゆうさん
🎤発起人 杉江由次さんに聞いた、本屋大賞への想い

 今年で20回目を迎えた本屋大賞。発起人である杉江由次さんにインタビューさせていただきました。

 

杉江由次さん  

1971年埼玉県生まれ。書店アルバイト、医学書専門出版社を経て、1997年に本の雑誌社に入社。営業マンとして活躍しつつ、編集の仕事も手掛ける。著書に「『本の雑誌』炎の営業日誌」(無明舎出版)、『サッカーデイズ』(小学館文庫)がある。本屋大賞の発起人としても活躍。2004年から本屋大賞を開催し、今年で20回目を迎えた。

――今年で20回目を迎えた本屋大賞ですが、今の気持ちをお聞かせください。

 

 ここ数年間はコロナ禍のため、会場での開催ができませんでしたが、今回、4年ぶりに会場で行うことができました。会場には500人近くの人が集まったと思います。これまでにない賑わいを見せ、お越しいただいた書店員さん、出版社の皆さんの熱意をじかに感じることができました。無事開催することができ、ほっとしています。

――今年は、『汝、星のごとく』の作者、凪良ゆうさんが大賞を受賞されましたが、凪良さんのスピーチを聴いて、もらい泣きしている方が何人もいらっしゃいましたね。

 

 私もあの光景にはびっくりしました。大勢の書店員さんが手作りのPOPを持ってきて、式の最後に凪良さんを囲んで壇上で記念撮影をする風景は、見ていてとても心が温まりました。芥川賞や直木賞の発表とは違い、本屋大賞の発表会には、作家さんだけでなく編集者や営業の方々、そして何よりも書店の方々が全国から数多く集まり、表舞台に立つことができます。このような発表会はほかにありません。今では年に一度、業界の皆さんが集まる同窓会のような場にもなっているだけでなく、先にSNSで知り合った者どうしが初めて会う「オフ会」のような場にもなっているようです。このような大規模な会になるとは、長年運営に携わっている実行委員の誰もが想定していなかったと思います。

――どのようにして本屋大賞ができたのか、また20年間、続けてきてよかったと思うことをお聞かせください。

 

 私は1997年に本の雑誌社へ入社し、毎月150~200軒もの書店へ営業に出ていましたが、ちょうどその年を境に、業界全体が不況の時代へと突入していきました。

 本屋大賞のアイデアが生まれたのはその数年後です。2003年の直木賞の発表で、該当作品なし、という知らせを聞き、驚きとともにがっかりしたわけですが、その後開かれた同業者どうしの飲み会の席で、「何とか本を売りたいよね、ならば自分たちで賞を作っちゃおうか」と何気なく言ったことが発端でした。その言葉を聞き流すことなくすぐに「実行に移そう」と言ってくれた博報堂の方の後押しや、協力者の応援があって、実現へ向けて動き出すことになりました。

 そのときすでに書店員さんは出版社の我々よりも不況への危機感を肌で感じていたのでしょう。「実は今、こんな企画を思い描いているんだけれど」と声をかけていくと、何人もの書店員さんが次々に賛同してくれ、実行委員会を発足することができました。

 

 第1回目の本屋大賞は、神楽坂にある出版クラブが入っているビルの一室で行われ、50人くらいのこじんまりとした発表会でした。そのときは、小川洋子さんが大賞を受賞されました。まだ世間に広まる前でしたから、ご本人も「なんだかよくわからないけれど、新しい賞がもらえた」という感じのものだったのではないかと思いますが、発表後にマスメディアがニュースとして取り上げてくれたことで、一気に全国に知れ渡り、今では業界のお祭り、と言われるようにまで発展しました。

 

 実際、20年間続けていくのは決して容易なことではありませんでした。予期せぬトラブルもありましたし、ときには批判を受けることもありました。本屋大賞実行委員会なんて立派そうに見えるかもしれないけれど、皆ボランティアですからね、金銭的な喜びもありません。

 ですが、何年も続けていく中で、ある出来事をきっかけに、新たな視点から本屋大賞を見ることができるようになりました。

ーーそれは、どのような出来事だったのですか?

 

 当時高校生だった娘から、「お父さん、学校の図書室に本屋大賞のコーナーができて、ノミネート作品が展示されているよ。図書室に足を運ぶ学生も増えたよ」という報告を聞き、本屋大賞が書店だけでなく公共の場でも取り込まれていることを知ったのです。

 私は、自身の性格を知る友人から、「これ、読んでみなよ。きっと面白いって言うと思うから」と勧められて読んだ村上龍さんの小説をきっかけに、本の魅力にどっぷり浸かり、この業界へ入ることを決意したのですが、そのときの友人のような役割を本屋大賞が担い、本好きな人が一人でも多く増えるのなら、それはとても嬉しいことです。本を売りたいという気持ちに加え、モチベーションアップにもつながりました。

――私も今回の受賞作品を読んで、読書の楽しさを再認識しましたし、まだ読んでいない歴代受賞作品や、これまでのノミネート作品も読みたくなりました。

 また今回は、会場前の廊下には歴代受賞者20名からのメッセージボード 🔍も掲出されていましたね。皆さんの気持ちのこもったメッセージを読ませていただきました。

 ボードにはメッセージだけでなく、【20年経って、あらためて思う。本屋は[   ]でできている。】というお題もあり、その回答も大変興味深かったです。ちなみに杉江さんは、本屋とはどんなものでできていると思いますか?

 

 なかなか難しいお題ですが、私にとって【本屋は、書店員さんでできている。】ですね。書店員なくして書店なし。これからも一緒にがんばっていきたいです。

――書店の数が年々減少していくなかで、本を売る側・買う側それぞれにとって、本屋大賞への期待はさらに大きなものになっていくことと思います。書店員さんの声を反映できる本屋大賞を、これからもずっと続けていただきたいです。

 

 まずは1回やってみようと思って始めた本屋大賞でしたが、20回目を迎えられ、自分でも驚いています。あと何年続けられるかな? と毎年思っていますが(笑)、これからもがんばっていきたいと思いますので、ぜひ応援してくださいね。

 

 

取材・文   向山邦余

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