2022.03.01

世界情勢を考える
🌎【地政学から見た、ロシアの特徴とは?】

地政学で考えるロシアの特徴

 世界一の領土を持ち、かつて世界2位の大国だったロシア。その自負が、対外戦略に影響を与えています。今回は、地政学から見たロシアの特徴を解説します。

📝歴史 

🌎海外に進出するときの「5大南下ルート」+「新・北極海ルート」

 

 地理的条件により、海外へ進出するルートは旧ソ連時代と同じ。通行可・不可を合わせて全部で6つのルートがあります。

 

①バルト海ルートロシアにとって数少ない自国の海岸を通るルートで、メインルートの1つ。

②ヨーロッパ陸ルート旧ソ連がドイツへ侵攻したルート・ベラルーシからポーランド、ドイツへ進む。

③黒海ルート黒海からトルコの海峡を通るルート。現在も周辺の国では紛争が起こっている。

④インド・アフガニスタンルートソ連時代に侵攻したルートだが、現在は影響力がなく、通行できない。

⑤シベリア・ウラジオストクルート…ロシアの東側、アメリカ大陸側を通るルート。北方領土にも近い。

NEW! ⑥北極海ルート…2000年以降に開発されたロシアの北側を回る新ルート。

ロシアの南進に重要な伝統的5大ルート

 国土の多くが、北海道よりも北に位置するロシア。冬季には港や海が凍りつき、使えなくなるため、凍らない拠点を求め、「南方へ進出すること」が地政学的戦略の大原則です。南進には伝統的に5つのルートがあり、近年、そこに北極海ルートも加わっています。

 一方、国境を接する国の数が14と世界一多く、攻められるリスクが高いのがロシアの弱点です。しかし、ロシアはほかの大国と比べて経済力が低く、すべての国境線を防衛するのは難しい現実があります。そこで、周辺国と協力関係を結び、対抗勢力とのバッファゾーンにする戦略を取ることが多いのです。

 また、周囲の国に対して、ロシア側には、「ソ連崩壊後の独立国は、失った国土」という意識があります。周囲の国の併合は、「ただ取り戻すだけ」の行為と考えており、心理的な抵抗が少ないのです。

 ユーラシア大陸の中心部にあるロシア。北部は冬期に凍りつく北極海、南部は他国に囲まれているため、シーパワー勢力にとっては非常に攻めづらく、防御には優れています。反面、攻撃に関しては、北極海の凍結のせいで不自由になるため、拠点を求めて南方に進出します。ただし、ロシア南方にはスタノヴォイ山脈やサヤン山脈があり、どこからでも南進できるわけではなく、南進可能なのは、5つのルートだけなのです。

ロシアにとって可能性に満ちた北極海ルート

 以前は”北極海は通航不能”が地政学の常識でした。しかし、氷が溶けて2000年頃に通航可能になり、開通したのが北極海ルートです。

 このルートは従来のルートに比べ、「極東~ヨーロッパ側の距離の短縮」「海賊がおらず安全」「ロシア1国の許可で航行できる」といったメリットがあります。現状ではデメリットもありますが、ルートに隣接するロシアにとっては「通航料の徴収」「通航をコントロールして影響力を持つこと」が可能になります。

 

 また、北極海周辺には莫大な量の石油や天然ガスが発見されています。ルートだけでなく、エネルギーの面でも北極海は世界の情勢に大きな影響を与える可能性があり、多くの国が開発に参加しています。

ロシアのGDP

「世界一の領土」を持つロシアですが、GDPは韓国やカナダと同程度です。ロシアの経済は、ソ連崩壊によって混乱。その後は天然資源の輸出により向上しましたが、いまだに国民の13%程度は貧困層だといわれています。

ソビエト連邦崩壊後

 1991年にソビエト連邦は崩壊し、ロシアと14の独立国家へと解体されました。<解体後の国>ロシア、アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、エストニア、ジョージア、カザフスタン、キルギス、ラトビア、リトアニア、モルドバ、タジキスタン、トルクメニスタン、ウクライナ、ウズベキスタン

📝衝突

🌎広大な領土を守るため、周辺を協力関係の国でかためてバッファゾーンをつくる

 

 世界でもっとも広い面積のロシアは、国境を接する国の数も世界一。経済的にも国境を完璧に防衛するのは難しいため、隣接する国を協力的な状態にして、対抗勢力とのバッファゾーン(緩衝地域)にしています。

 

📝国土

🌎旧ソ連崩壊後の独立国は「本来は自分のものだが失った領土」

 ロシアにとって、旧ソ連崩壊後に独立した国は、本来は自国の領土であるという意識が強いようです。周辺国への対外的なふるまいにも、かつての領土を取り戻したいという国土回復運動的な気持ちが見られます。

MORE

◆ロシアのクリミア併合にはどんな意味がある?

◆ロシアの地政学的戦略が見える東欧の内戦

◆北極海ルートはロシアと日本にどんな影響が?

◆世界を動かす大国の地政学

など、さらに知りたい方は👉こちら

※イラスト/前田はんきち

※写真/shutterstock

 

※本記事は下記出典を再編集したものです。(新星出版社/向山)

地政学(サクッとわかる ビジネス教養シリーズ)
奥山真司監修 (プロフィールは下記参照)
急速にグローバル化が進んでいる時代。だからこそ、ビジネスの現場では世界情勢を知らなければなりません。世界情勢を理解し、話をするには「地政学」が必須です!本書は「特別な図解を見るだけで、地政学の会話・説明ができる」ようになります。防衛省の幹部候補生に地政学を教えている、地政学の第一人者「奥山真司」先生が伝授!
購入はこちら
奥山真司(オクヤママサシ)
1972年横浜市生まれ。地政学・戦略学者。戦略学Ph.D.(Strategic Studies)。
国際地政学研究所上席研究員。戦略研究学会編集委員。日本クラウゼヴィッツ学会理事。
カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学(BA)卒業後、英国レディング大学院で、戦略学の第一人者コリン・グレイ博士(レーガン政権の核戦略アドバイザー)に師事。
地政学者の旗手として期待されており、ブログ「地政学を英国で学んだ」は、国内外を問わず多くの専門家からも注目され、最新の国家戦略論を紹介している。
現在、防衛省の幹部学校で地政学や戦略論を教えている。また、国際関係論、戦略学などの翻訳を中心に、セミナーなどで若者に国際政治を教えている。

著書に『地政学 アメリカの世界戦略地図』(五月書房)、『“悪の論理"で世界は動く! 』(李白社)、『世界を変えたいなら一度"武器"を捨ててしまおう』(フォレスト出版)、訳書に『大国政治の悲劇』(ジョン・ミアシャイマー著)、『米国世界戦略の核心』(スティーヴン・ウォルト著)、『進化する地政学』(コリン・グレイ、ジェフリー・スローン編著)、『胎動する地政学』(コリン・グレイ、ジェフリー・スローン編著)、『幻想の平和』(クリストファー・レイン著)、『なぜリーダーはウソをつくのか』(ジョン・ミアシャイマー著、以上、五月書房)、『戦略論の原点』(J・C・ワイリー著)、『平和の地政学』(ニコラス・スパイクマン著)、『戦略の格言』(コリン・グレイ著、以上、芙蓉書房出版)、『インド洋圏が、世界を動かす』(ロバート・カプラン著、インターシフト)がある。

新着記事