私は40年近くアドラー心理学に関わってきました。そのなかで、もっとも大事にしているアドラー心理学の考え方、それが「勇気づけ」です。
「勇気づけ」の私の定義は、「困難を克服する活力を、自分自身や相手に与えること」。この反対にあるのが、克服する活力を奪う「勇気くじき」です。効率や生産性を重視する現代において、人々の心は疲れやすくなっています。そんな今だからこそ、必要とされるのが「勇気づけ」なのです。身近な人が疲れているときに有効な方法なので、覚えておきましょう。あなたの勇気づけが呼び水となって、相手の中に「自分を認める力」が生まれます。
それでは早速、本書に書かれている「勇気づけ」の具体例を5つ、紹介していきます。
「ヨイ出し」の反対語、「ダメ出し」は辞書にも載っていますが、「ヨイ出し」は載っていませんね。この言葉の持つ意味は、他人のよいところを探し、認めることです。
「ダメ出し」をされると、人は行動することをためらうようになってしまいます。代わりに「いい挑戦だったね」など、「ヨイ出し」をして、前向きに行動できるようにアシストしてあげることが大切です。
「ヨイ出し」で勇気づけをした人を、さらにポジティブにさせるのが加点主義です。反対語は「減点主義」。私たちはとかく高い基準から、ダメなところを減点して考えがちです。そうではなく、低いベースからどんどん積み重ねていく「加点主義の発想」をみなさんに知っていただきたいと思います。「ここがよかった」と具体的に相手に伝えることで、相手のなかに自分を認める力が育っていくのです。
3つ目は、「結果重視」に代わる「プロセス重視」です。
物事のプロセスには、地道な営みが必要です。そこにフォーカスすると、努力することはいいことだと学ぶことができます。ところが、結果にフォーカスすると、結果と比べて必要以上に自分を過小評価してしまうことになります。
売上などの成果だけで判断するのではなく、そこに至るまでに努力したというプロセスを認めて、ヨイ出しをすることが大切です。
私たちは失敗を恐れてしまいますが、アドラー心理学では、失敗は「チャレンジの証」や「成長のチャンス」だと前向きにとらえています。失敗はその後の成長に役立ちます。失敗を恐れずに、チャンレジしてみてください。
私たちは、日ごろ感謝の心を忘れがちですが、いろいろな場面で感謝できることがあります。感謝する心は確実に相手に伝わり、ブーメランのように返ってきます。
相手がしてくれた行動に「すみません」と返すことは、自分を卑下し、相手の好意を否定する行為です。「ありがとう」と伝えることは、相手の行動を認めることでもあるのです。
①「ヨイ出し」②「加点主義」③「プロセス重視」④「失敗を恐れない」⑤「感謝」、以上5つが、心を元気にする「勇気づけ」の具体的な方法です。この理論を活用して、ぜひあなた自身を、そして身近な人たちを勇気づけていただきたいと思います。詳しくは本書に載っています。ぜひ読んでみてくださいね。
外資系企業の管理職などを経て、1985 年に有限会社ヒューマン・ギルドを設立。同社にてカウンセリング、カウンセラー養成や公開講座を行うほか、企業・自治体・学校等での講演、カウンセリング・マインド研修、勇気づけ研修、リーダーシップ研修など多岐に渡り、その受講者は延べ20 万人を超える。
著書に『マンガでやさしくわかるアドラー心理学』シリーズ(日本能率協会マネジメントセンター)、『人生が大きく変わる アドラー心理学入門』(かんき出版)、『人を育てるアドラー心理学』(青春出版社)など多数。
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