親の介護や看病といった問題は、必ずしも親が年齢を重ねていきながら徐々にやってくるものではなく、ある日突然やってくることも多々あります。そしてこのことは、目下、育児に奮闘中のママ・パパにとっても他人事ではありません。
晩婚化・晩産化等を背景に、育児をしながら親の介護も同時に担う「ダブルケア」を行う人口は、平成28年の内閣府男女共同参画局による調査で約25万人もいます(女性約17万人、男性約8万人)。年代的には30歳~40歳代が8割と最も多く、この割合は育児のみを行う者とほぼ同様となっています。
どんな「もしも」が起こりうるのかは誰にも分からないからこそ、「知っておくこと」はとても重要であり、知識を持つことで将来への不安を少なくすることもできます。その時に最善の選択が出来るように、知っておくべきことを今から勉強しておきましょう。
最終回の今回は、「一番知りたい 仕事を続けながら介護をするということ」を解説します。
介護を理由に仕事を辞める人は年間10万人以上と言われています。それだけ介護と仕事の両立は難しいものなのです。
では、仕事を辞めれば今までより楽になるのでしょうか。現実には離職前よりも負担が増えたと感じる人の方が多いようです。
その中でも負担が大きいのが経済面。収入が減り、十分な介護サービスが利用できなくなると、以前より介護の負担は増えてしまいます。親の介護度が高くなれば、負担はますます増える一方です。また、毎日親と向き合う介護一色の生活の中、精神的に追い詰められやすくなったりします。
辞めた後のデメリットを考えれば、できるだけ介護と仕事を両立させたいものです。
両立させるためには、まず職場の上司や同僚などに親の介護のことを話して、理解を得ることが大切です。企業には「介護休業・休暇制度」が義務付けられています。上手にこの制度を利用するほか、会社独自のサポート制度がないか調べ、あれば活用しましょう。時短勤務や残業についても、職場の人の理解を得ていればスムーズです。
また、介護保険制度を上手に利用すること。介護は仕事をしながらでもできる範囲にとどめ、あとは「プロに任せる」と割り切ってしまうことが仕事と介護を両立するコツ。
「親の介護は家族がするもの」という考えは大昔のこと。いろいろな人のサポートを受けながら介護をしていきましょう。
◆精神面
・非常に負担が増えた・負担が増した→64.9%
・変わらない→12.3%
・負担が減った・かなり負担が減った→19.6%
・わからない→3.2%
◆肉体面
・非常に負担が増えた・負担が増した→56.6%
・変わらない→18.1%
・負担が減った・かなり負担が減った→22.1%
・わからない→3.1%
◆経済面
・非常に負担が増えた・負担が増した→74.9%
・変わらない→19.6%
・負担が減った・かなり負担が減った→3.5%
・わからない→3.5%
※三菱UFJリサーチ&コンサルティング「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」(平成24年度厚生労働省委託調査)を一部改変
遠距離介護で負担を感じてくるのが交通費。たとえ月1回でも、定期的に帰省をしなければならなくなると、交通費がかさんできます。飛行機や新幹線を利用するなら尚更です。
できるだけ交通費を節約したいときは、割引サービスや格安チケットを利用しましょう。航空会社の中には、介護で帰省する人を対象とした「介護割引」を実施しているところがあります。これを利用すると、通常の普通運賃より30~40%安くなります。また、一般運賃割引の「特割」を利用する手もあります。新幹線の場合、回数券を利用すると一般料金よりお得です。ただし、有効期限が3か月で利用できない期間(ゴールデンウイークやお盆、年末年始など)もあるので注意しましょう。
「介護費用は親の財布」からといっても、親に持ち家や預貯金もなく、年金もない、もしくはあってもごくわずかという場合もあります。そうした親の介護生活を経済的に支えている人も少なくないでしょう。
しかし、介護生活は何年かかるか分かりません。リストラや病気で収入がなくなることもありますし、定年後は収入が減ります。親の要介護度は上がることはあっても下がることは考えにくく、さらに費用はかさむことが予想されます。もしも親の生活を支えられなくなったら、親の「生活保護」の申請を検討しましょう。多少なりとも収入がある子ども(自分)がいる場合は、生活保護を受けられないのではないかと思うかもしれませんか、扶養義務者(子ども)がいても生活保護申請はできます。
①親の市区町村の福祉事業所の生活保護担当へ
※福祉事業所が設置されていない町村の場合、町村役場でも申請手続きを行える。
↓
②相談・申請
申請に必要なものはない。
(生活状況の審査や資産調査を行った上で、申請日から原則14日以内)
↓
③生活保護受給の回答
★生活保護申請から生活保護開始まで、社会福祉協議会が行う「臨時特例つなぎ資金」を利用できる場合もある。
生活保護は、原則、世帯単位で保護を決定・実施することになっていますが、このようなケースでは、両親だけ生活保護を受けることができる場合もあります。詳しくは、福祉事務所に相談してください。
5回にわたってお送りしてきた『大切な家族の入院・介護でやるべきことのすべて』は、いかがでしたでしょうか。実際に知っていないと損をしてしまったり、最悪、親子で共倒れになりかねない介護問題。いつか来るであろう親の老後に向けて知っておいたほうが良いことは山ほどあり、今回ご紹介したのはその中の一部に過ぎません。『大切な家族の入院・介護でやるべきことのすべて』には、今回の記事以外のあらゆるケースを取り上げ、対処法が述べられています。
もしものことがあった時に、すぐに対応できる準備は必須です。備えあれば憂いなし。今のうちから不安を少しでも減らしましょう!!
※本記事は、下記出典をもとに一部加筆し、再編集したものです。(新星出版社/室谷)
「親が入院した」という連絡は、ある日、突然やってきます。いざ、というときのために備えておきましょう。