行動経済学は、自身のお金の使い方を考える際にも役に立ちます。前回は、人間はどのようなプロセスを経て意思決定しているのかを説く「プロスペクト理論」についてお話しました。今回は頭の中でさまざまな勘定を行い、意思決定するまでの過程の理論、「メンタルアカウンティング」を説明します。この理論を知ると、無駄遣いを減らすことができるかもしれませんよ。
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損得や確率が関係する意思決定には、その意思決定のために状況を評価する「 前処理 」という段階が影響を与えています。前処理では、選択肢を検討し、参照点が決まります。
この検討項目の1つに心の口座(カテゴリー)があります。頭の中で、生活費、娯楽費のように、複数の口座をつくり、それぞれの口座の中で費用対効果を最大限にするため、無意識のうちにやりくりをしているという考え方です。これを「メンタルアカウンティング( 心理的勘定)」といいます。
チケットを紛失した場合は、チケット代として支払った1万円に、買いなおす1万円が加算され、2万円が娯楽費として計上されるため、多すぎると感じてあきらめる人が多いのです。
その一方で1万円札をなくした場合、その1万円は娯楽費としてではなく、あくまで生活費1万円のロスとして捉えられるため、もう一度チケットを買いなおす傾向があります。
このように、人は頭の中の勘定科目によって、支出をコントロールしているのです。このようなことを行動経済学で学べば、無駄遣いを減らすことができるかもしれない、というわけです。
◆次回は「人はどうして目の前の誘惑に弱いのか!? 時間的選好」について解説します。
出典 『サクッとわかるビジネス教養 行動経済学』
イラスト 松尾 達
本記事は上記出典を再編集したものです。(新星出版社/向山)
本書は行動経済学の基本となる考え方をイラスト図解で簡単に示し、それをビジネスや生活に生かすための方法を豊富な実例とともに紹介します。「見るだけで会話・説明ができる」というシリーズコンセプトの通り、この本を読めば行動経済学的な視点で戦略や企画を提案することができるようになります。
著者は『東大教授が教えるヤバいマーケティング』(KADOKAWA)など著書多数の東大教授、阿部誠先生。個人の心理に着目したマーケティング研究の第一人者がおくる、ビジネスパーソンのための行動経済学の本です。
主な著書に『大学4年間のマーケティングが10時間でざっと学べる』『東大教授が教えるヤバいマーケティング』(共にKADOKAWA)、共著書に『(新版)マーケティング・サイエンス入門:市場対応の科学的マネジメント』(有斐閣)などがある。