2020.04.09

連載第2回 介護のことで困ったらどうすればいいの?
相談できるサービスを知っておこう

 ふとした瞬間にあんなに元気だった父が、あんなにしっかりしていた母が、「年をとったな」と思う時がやってきた時。

 遠い未来だと思っていた親の介護や看病がそう遠くない未来に迫っていると気づいた時。

 急な入院や在宅介護、認知症…

 どんな「もしも」が起こりうるのかは誰にも分からないからこそ、「知っておくこと」はとても重要であり、知識を持つことで将来への不安を少なくすることもできます。

「もしも」の時に最善の選択が出来るように、知っておくべきことを今から勉強しておきましょう。

 

 第2回は「親の介護」に関する、知っておきたい知識についてまとめました。勉強も準備も追いつかないままいきなり介護が始まってしまった…なんてことのないように、最低限知っておきたい事柄をいくつか紹介します。

親のことで相談したいことがあったら

 親のことで相談したいことがあったら、いったいどこに相談すればよいのか。あなたは知っていますか?

 介護の有無を問わず、親のことで困ったことがあったなら、親が住んでいる市区町村の「地域包括支援センター」に相談しましょう。地域包括支援センターは、国が進めている「地域包括ケアシステム」の拠点でもあります。地域包括ケアシステムとは、高齢者が最期まで住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けることができるよう地域の社会資源(介護・医療・保険・生活支援・介護予防など)が連携し、一人ひとりに必要なサービスを提供していく支援体制のことです。

 

 親の在宅生活を支えてくれるもので、介護はもちろん、医療や生活支援なども提供してくれます。地域包括支援センターを通じて、上手に地域のサポートネットワークを活用しましょう。

 

【地域包括支援センターの主な支援内容】

 

◇相談窓口…高齢者に関するさまざまな相談に応じます(必要に応じて訪問もOK)。

◇介護予防…要介護認定で要支援と認定された人に「介護予防ケアプラン」の作成や、要介護状態にならないための介護予防などを行います。

◇高齢者の権利を守る…虐待の通報や対策、悪質商法などの被害防止をしたり、成年被後見制度の手続きを支援します。

通院の足がないときはどうすればいい?

 高齢で足腰が弱ってくると、病院へ行くのも一苦労です。近所のクリニックさえ歩いていくのが困難になってくることも。バスや電車を使っての通院なら、なおさらです。通院には家族が付き添うか、自家用車での送迎を考えなくてはいけません。

 しかし、家族が付き添えない、自家用車がない、付き添うとしても歩行がかなり困難な場合は、「通院の足」の確保が必要です。最近は車いすのまま乗れるタクシーや、介護タクシーなどもあります。また、社会福祉協議会などが行っている送迎サービスもあります。なお、通院のためのタクシー代や送迎サービス代は、医療控除の対象になるので、領収書は大切に保管すること。市区町村によっては、タクシーの支払いに使える補助券をくれるところもあります。

 地域のほかの高齢者がどのようにして通院しているのか、またどのような送迎サービスがあるのか、地域包括支援センターにも聞いてみましょう。

 

【通院のための交通手段】

タクシー…電話で呼んだ場合は、迎車料金がかかる場合もありますが、手軽に利用できる交通手段です車いすのまま乗車できる車両を持っている会社もあります。

 

介護タクシー「介護職員初任者研修」などの資格を持っているドライバーが運転するタクシーです。乗り降りの手伝いだけでなく、目的地で降車後の移動の介助なども頼めます。車いすだけでなく、ストレッチャーでも乗車できる車両を用意している会社も多いです。通院だけでなく、買い物や観劇など自由に利用できます。料金は会社によってまちまちですが、目安は、時間制の場合1時間6,000円前後。

 

※介護保険で利用できる介護タクシーもあります。要介護1以上でケアマネジャーによるケアプランが必要ですが、介助料の目安は訪問介護(通院時の乗車・降車介助)に対する負担額(本人(親)の所得により、2~3割)+運賃・迎車料金です。

 

社会福祉協議会の送迎サービス社会福祉協議会によっては、通院のための送迎サービスを実施しています。料金の目安は1回500円~1,500円。

 

📝memo
社会福祉協議会のサービス

 社会福祉協議会(略称は「社協」)は、社会福祉法に基づいて都道府県や市区町村に設置されている非営利の社会福祉法人です。地域でさまざまな福祉活動を行っていますが、高齢者の在宅生活をサポートするサービスにも力を入れています。

 通院の送迎サービスだけでなく、車いすの貸与を行っている社協もあります。通院時に使うときは、問い合わせてみるとよいでしょう。

 地域の社協がどのようなサービスを行っているかは、ホームページなどで確認できます。

全然他人事じゃない!もしかして「認知症?」と思ったら。

 「最近、同じ話を何度も繰り返すけど、まさか認知症?」など、気になることがあったら、記録をつけてみましょう。「〇月〇日 また〇〇を買ってきた。」などのように書いておけば、いつからどんな症状があったのか一目瞭然となり、かかりつけ医などに相談する際に役立ちます。

 遠方に住んでいる家族の場合は、帰省の際や電話で会話した時に、おかしな言動に気付くかもしれません。他の家族や親戚などが親の近くに住んでいるのなら、様子を見てもらいます。そういう家族がいない場合は、数日間家に滞在する機会をつくって、親の様子を丁寧に観察してみましょう。

認知症早期発見の目安

 下記のリストは、「公益法人 認知症の人と家族の会」がつくった早期発見のための目安です。医学的な診断基準ではありませんが、暮らしの中の目安として参考にしてください。いくつか思い当たることがあれば、念のため専門家に相談しましょう。

 

【もの忘れがひどい】

□今切ったばかりなのに、電話の相手の名前を忘れる

□同じことを何度も言う・問う・する

□しまい忘れ置き忘れが増え、いつも探し物をしている

□財布・通帳・衣類などを盗まれたと人を疑う

 

【判断・理解力が衰える】□料理・片付け・計算・運転などのミスが多くなった

□新しいことが覚えられない

□話のつじつまが合わない

□テレビ番組の内容が理解できなくなった

 

【時間・場所がわからない】

□約束や日時や時間を間違えるようになった

□慣れた道でも迷うことがある

 

【人柄が変わる】

□些細なことで怒りっぽくなる

□周りへの気づかいができなくなり頑固になった

□自分の失敗を人のせいにする

□「この頃様子がおかしい」と周囲から言われた

 

【不安感が強い】

□ひとりになると怖がったりさびしがったりする

□外出時、持ちものを何度も確かめる

□「頭が変になった」と本人が訴える

 

【意欲がなくなる】

□下着を替えず、身だしなみをかまわなくなった

□趣味や好きなテレビ番組に興味を示さなくなった

□ふさぎ込んで何をするのも億劫がり嫌がる

 

●Check&準備●

👉認知症は誰でもなるものと認識し、日頃から親を観察する

👉どういう病気なのか、情報を集める

 

「いつか」の日のためにできること

 いつから始まるか分からない介護生活、そしていつ発症するかわからない認知症。

 いかに使えるサービスやお得な方法を知っているかで介護の大変さが大きく変化します。

 今回のお話で少しでも親の介護や認知症について知っていただけたらと思います。次回は「介護保険で在宅介護」についてご紹介します。

※本記事は、下記出典をもとに一部加筆し、再編集したものです。(新星出版社/室谷)

大切な家族の入院・介護でやるべきことのすべて
藤林慶子監修 (プロフィールは下記参照)
今は元気な親も、若くはありません。近い将来、必ず入院したり、介護が必要になります。本書は、突然、親が入院したときに、“すぐにしなければならないこと”をはじめ、入院・通院・介護生活を支えるために必要な情報をわかりやすく解説します。たとえば、入院時の手続きやお金のこと、転院を進められたときの対応、介護保険の手続きなどを、ふんだんに図版を使って具体的に解説します。もちろん、介護の手続きだけでなく、介護保険を利用する具体的な方法やそのお金のこと、また施設の種類や特徴なども、解説します。
「親が入院した」という連絡は、ある日、突然やってきます。いざ、というときのために備えておきましょう。
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藤林慶子(フジバヤシケイコ)
1986年日本女子大学大学院文学研究科社会福祉学専攻博士課程前期修了。現在、東洋大学社会学部社会福祉学科教授。介護保険制度、社会福祉専門教育、地域包括ケアシステムを専門としている。著書に『居宅ケアプラン コンピュータ・ソフトを利用したケアマネジメント』(有斐閣)などがある。(書籍刊行時)
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