清算型か再建型かという倒産の分類において、清算型の手続きは会社を消滅させることになりますから、いわば衰退的な手続きだといえます。
倒産状態にはなくても、解散から清算という手続きを経て会社を消滅させる自主廃業(通常清算)は、これも衰退的な手続きだといえるでしょう。しかし、会社の終わらせ方には、衰退的に消滅させる方法以外にも、発展的に解消する方法が存在します。
この典型とされるのがM&A「(Mergerand Acquisitions)」と呼ばれる方法で、具体的には会社の合併や分割、事業譲渡、株式譲渡といった手法があり、多くは専門の業者やコンサルタントが仲介します。
また、経営破綻や業績不振で会社を存続できないという状況にはなくても、自主的に会社を消滅させるケースがあります。例えば、「現在の業績は好調だが、後継者がいないために廃業するしかない」という理由や、会社を設立した時点で解散の時期を決めてあるような場合です。
とくに後継者がいないために会社を終わらせようと考える高齢の経営者は増えており、M&Aによって社員の生活が守られるといったメリットが注目されています。
2020年10月、ホームセンター事業を展開する「DMCホールディングス」が、同業の「島忠」に対してTOBを実施した上で買収することを発表しました。
M&Aの代表的手法である「TOB」とは株式公開買付のことで、公告などによって上場企業が発行する株式の買付価格や期間を公表し、市場を通さずに不特定多数の株主から買い付ける行為。相手企業の経営陣から同意を得て行う「友好的TOB」と、同意を得ずに行う「敵対的TOB」があり、DMCによるTOBは、島忠側が賛同の意思表明をしていたので友好的TOBでした。
ところが数週間後、やはり同業者であるニトリホールディングスが、島忠に対する対抗TOBを検討していることを公表します。この時点では、「具体的な提案はない」としていた島忠でしたが、翌週にニトリ側から「経営統合に関する意向表明書」を受け取って検討の結果、翌月にDMCとの経営統合を撤回してニトリとの経営統合を発表します。
島忠は、12月にDMCによるTOBが不成立になったことを発表、ニトリ側の買付期限満了翌日には、ニトリとのTOBが成立したと発表。2021年3月に、ニトリホールディングスの完全子会社となっています。このM&Aが注目されたのは、事前同意を得ていない完全な競争買収であったにもかかわらず、敵対買収にならなかったことでした。DMCの4200円に対し、ニトリは5500円という買付価格で少数株主の利益を確保し、慎重に事を進めたことが成功のカギだといわれています。
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出典『図解わかる 倒産のすべて』
本記事は、上記出典を再編集したものです。(新星出版社/向山)
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慶應義塾大学法学部卒。一橋大学法科大学院了。
麒麟麦酒株式会社法務部での勤務を経て弁護士登録(第二東京弁護士会)。
事業再生実務家協会会員、第二東京弁護士会倒産法研究会会員。
私的整理手続(事業再生ADR、中小企業再生支援協議会、特定調停、地域経済活性化支援機構(REVIC)等)
から法的手続(会社更生、民事再生、特別清算、破産)まで、これまで多数の案件を、債務者代理人、
債権者代理人、第三者専門家又は裁判所から選任された破産管財人等の公的立場として取り扱ってきた。
企業法務に精通しているほか、事業再生・倒産の分野で特に強みをもつ弁護士。
共著書に『破産手続書式集 新版』(慈学社)などがある。