NHKプロフェッショナル仕事の流儀「会社も、人も、もっと輝ける~転職エージェント 森本 千賀子」出演。
1970年生まれ。獨協大学外国語学部卒業。1993年リクルート人材センター(現・株式会社リクルートキャリア)に入社。2012年4月より株式会社リクルートエグゼクティブエージェントに転籍。大手からベンチャーまで幅広い規模・業種の企業に対する人材戦略コンサルティング、採用支援サポート全般を手がけ、主に経営幹部・管理職人材の採用および転職支援に取り組む。これまで3万人超の転職希望者と接点を持ち、2000人超の転職を媒介してきた。2017年3月、株式会社morichを設立。パラレルキャリアを実践し転職・中途採用支援ではカバーしきれない企業の課題解決に向けたソリューションを提案、実行する。
連載第1回目では、転職をする際に最も重要なことをまとめました。ここでは、内定を獲得し、新たな職場への転職が決まったら、転職先で成功するためにやっておくべきことを説明します。
企業が中途採用を行う背景はそれぞれ異なります。「自分は何のために採用されたのか」を分析しておくと、自らに期待される役割をある程度は認識できるでしょう。企業が中途採用を行う主な理由は、
●事業拡大に際し、即戦力がほしい
●新卒を採用できない
●欠員を補充したい
●組織の年齢構成を整えたい
●新規事業に乗り出すため、自社にない知見を持つ人材がほしい
●会社を変革してほしい・刺激を与えてほしい
などです。「自分がやりたいこと」と「企業から期待されていること」を擦り合わせ、組織の期待に応えるところからスタートする方がうまく着地できるでしょう。
中途採用者には自社のやり方を素直に受け入れ、社風になじんでほしい―そう考える企業は確かに少なくありません。一方で、企業から最近よく聞くのは「新風を吹き込んでほしい」という声です。
特に組織が拡大し、安定期に入った企業では、社員たちの考え方や価値観が画一化しやすくなります。そんな状態では成長が止まってしまう、イノベーションが生まれにくくなるということで、中途入社者には新しいものを持ち込んでほしいと、経営陣は考えるのです。
あなたの転職先がこれまでとは異なる業種の場合、「異業種の視点や発送を持ち込んでほしい」という期待を抱かれている可能性もあります。新たな業種の環境やルールに早くなじむことも大切ですが、「異なる部分」を捨てずに持っておき、機を見て生かすことを意識してみてはいかがでしょうか。
また、採用を行う企業の経営者からは、「既存社員に刺激を与えて、危機感を持たせてほしい」という声をよく聞きます。
新しい手法を持ち込むことで、「こんなやり方もあったのか」「このままでのやり方では時代に乗り遅れる」という発見を与えてほしい、ということです。新しく入る会社に合わせるだけでなく、自分が経験してきたやり方も活用してみることをお勧めします。
自身の採用背景を再認識したら、次は入社する会社の現状を把握しましょう。求人に応募して選考が進む間も企業分析を行ったかと思いますが、さらに力を入れて研究・分析することをお勧めします。
入社する会社が打ち出している「理念」や「ミッション・ビジョン・バリュー」をしっかりと頭に入れてください。これらの実現を目指す過程で至ったのが「現状」であり、理念やミッション・ビジョン・バリューの現状の間に生じているギャップを解消するために必要なことが「課題」です。
経営陣はその課題を解決する手段の一つとして、人材採用を行い、転職者に期待を寄せているといえるでしょう。経営陣が発信しているメッセージを読み込むなどして、中長期でのビジョンと提供したい価値の本質を捉えるようにしましょう。そうすれば自分に求められている動きも想像でき、新たな提案をする場面でも方向性がずれるのを防げるはずです。
企業が中途入社者に対して「会社を変革してほしい」「組織に刺激を与えてほしい」と期待していることは前述しました。
しかし、急がないでください。早く認められたいがために、入社後すぐに改革に着手し、失敗するケースが多くみられます。既存社員から反感を買い、協力を得られなくなってしまうからです。
転職先では「既存社員と同じ視点に立つ」ことが不可欠です。自分の経験はいったん脇に置いて、新しい職場のやり方をまずは受け入れてください。
焦らず、「急がば回れ」の姿勢で臨む方が結果的には早いタイミングで目標を達成することができるのです。
変革は一人では成し遂げられません。周囲を巻き込んで推進する必要があります。そうした観点から、入社直後から同僚とたくさんコミュニケーションを取り、よい関係を築くように努めましょう。
信頼を積み重ね、「この人が目指すビジョンに協力したい」と思ってくれる仲間・すなわちあなたの「ファン」を増やしていくことが大切です。
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- 企業が求める人材像
- 自己分析の具体的な方法
- 面接での具体的な注意点・面接を勝ち抜く話し方、「答えにくい」質問への対処法……
⇒次回、第3回は「入社直後、早く溶け込むためにはどう過ごすべき?」をお伝えします。
※写真/shutterstock
※本記事は、下記出典を再編集したものです。(新星出版社/向山)
1970年生まれ。獨協大学外国語学部卒業。1993年リクルート人材センター(現・株式会社リクルートキャリア)に入社。2012年4月より株式会社リクルートエグゼクティブエージェントに転籍。大手からベンチャーまで幅広い規模・業種の企業に対する人材戦略コンサルティング、採用支援サポート全般を手がけ、主に経営幹部・管理職人材の採用および転職支援に取り組む。これまで3万人超の転職希望者と接点を持ち、2000人超の転職を媒介してきた。2017年3月、株式会社morichを設立。パラレルキャリアを実践し転職・中途採用支援ではカバーしきれない企業の課題解決に向けたソリューションを提案、実行する。また、放課後NPOアフタースクール、一般社団法人ソーシャル・インベストメント・パートナーズの理事として、また複数社の社外取締役やアドバイザー、アンバサダーなどの活動にも注力。プライベートでは家族との時間を大切にし、二男児の母でもある。「妻」「母」「ビジネスパーソン」として充実した“トライアングルハッピー”の状態を目指す。