好きなものを好きなだけだけ食べて、飲む。そんな生活を送っていませんか?「健康診断の結果も問題ないし、まだまだ健康!」。そう安心している人も、実は血管はボロボロかもしれません。血管の老化で起こる病気には、心筋梗塞などの心臓疾患、脳梗塞や脳出血などの脳血管性疾患、さらには大動脈瘤や解離性大動脈瘤などさまざまなものがあり、いずれも突然死につながる恐れがあります。
「代表的な心臓血管病である心筋梗塞の怖さは、『何の前触れもなく突然発症する』ということです。健康診断の結果はオールA、まったく問題ないはずの人が、ある日突然、心筋梗塞を発症する。そんな場面に何度も何度も遭遇しました。そして心筋梗塞によって命を落とした人もたくさんいました。『昨日まで元気だったあの人がどうして?』まさに、その言葉の通り、見た目は健康そうな人が突然命を落とすことがある。血管病はそれくらい怖い病気だということを私たちは知っておかなければなりません」
と、すぎおかクリニック院長で、『最高の食べ方がわかる! 血管・血流の強化書』の監修者の杉岡充爾さんはいいます。
では、どのようにすれば血管を丈夫に保つことができるのでしょうか。
※本稿は、杉岡充爾『最高の食べ方がわかる! 血管・血流の強化書』(新星出版社)の一部を再編集したものです。
血管の病気は、よほど進行しないと検査では異常を示さず、また、症状も出ません。一般的な健康診断では見逃されることも多々あります。「健康診断をきちんと受けているから大丈夫」では済まされないことを知ってください。今この瞬間も、あなたの血管はもろくなってきているかもしれないのです。
血管は外から見えないので老化の判断も困難です。喫煙する、野菜をあまり食べない、甘いものが好き、お酒をよく飲む、運動不足、40歳以上に当てはまる人は、血管が老化している可能性があります。また、次の①と②の項目に1つでも当てはまれば要注意です。あなたが該当する項目はありますか?
①こんな不調はありますか?
・頭痛 ・動悸息切れ ・疲れやすい ・体が重い ・ぼーっとする ・喉が乾く ・急な体重減少 ・イライラしやすい ・末端冷え性
②生活習慣として当てはまるものはありますか?
・揚げ物が好き ・肉をよく食べる ・主食は白いパンや白米 ・甘いものをよく食べる ・野菜を食べない ・ジュースをよく飲む ・早食い ・肥満気味 ・睡眠不足
血管の老化とは、さまざま要因から血管の壁が弾力を失い、硬くてもろい状態になることです。血管老化は動脈硬化につながります。そして動脈硬化は長い年月をかけてゆっくり進行していきます。自覚症状がないことも多く、突然血栓ができて血管が詰まり、大きな疾病につながる恐ろしさがあります。
血管老化は高齢者の問題というイメージを持つ人も少なくありません。ですが、血管の老化スピードには個人差があり、必ずしも実年齢と血管年齢は一致しません。男女差もあります。
女性は女性ホルモン(エストロゲン)がコレステロール値を低く保ち、炎症を抑えてくれるため、動脈硬化は50代くらいから始まります。これに対し、男性は40代くらいから始まるため、男女の平均寿命の差が10年というのも道理ですね。そして、早い人では20代から動脈硬化が始まることもあるのです。
健康な血管の定義は、次の3つです。
①弾力性があり、しっかり拡張する(広がる)
②血管内の傷(ささくれ)の修復力が高い
③血液がさらさらの状態でかたまりにくい
①の血管拡張力を高めるためにポイントとなるのはNO(エヌオー)。NOとは「一酸化窒素」のことです。血管は外膜、中膜、内膜の3層構造になっており、内膜のさらに内側は血管内皮細胞で覆われています。NOは、この血管内皮細胞から放出され、血管の収縮・拡張を正常に保つ役割を担います。すなわち強力な「血管拡張物質」ということです。ほかにも、NOには血栓をできにくくし、血液をさらさらにしたり、血管の酸化を防ぐ、プラークの形成を抑える、血管の炎症を抑えるなどの作用があります。
加齢とともにNOの量は減ります。すると、血管の弾力性も下がります。血液をさらさらにして血栓を作りにくくする作用や、抗炎症・抗酸化作用も下がり、血管の老化が進みます。老化した細胞はやがて死に、二度とよみがえりません。つまり、老化する前に手を打たなければならず、そのカギとなるのがNOなのです。NOをたくさん作るためには、NOのもととなるアミノ酸、タンパク質を積極的に摂ることが重要です。
②の血管修復力のポイントとなるのは、アディポネクチンという物質です。これは体の脂肪細胞から分泌されるホルモンの一種。血管内にできた傷を修復する機能を持ちます。
①②に加えて血液がさらさらであること。この3つのはたらきが正常であることが血管の健康には不可欠です。
【原因その1 酸化】
私たちは、体に取り込んだ酸素を使い、食事から摂った栄養素を燃やすことでエネルギーを作り出しています。このとき、活性酸素と呼ばれる物質が発生します。活性酸素は、体内に侵入したウイルスや菌を退治する「いい面」も持ちますが、過剰に発生すると、体に備わっている抗酸化機能とのバランスが崩れ、体が強い酸化ストレスにさらされます。すると活性酸素は自分の細胞まで傷つけ、細胞が酸化します。酸化は体を老化させるだけでなく、血管にも被害をおよぼします。
【原因その2 糖化】
糖化とは、体の中のタンパク質が糖と結合し、糖タンパクという物質になること。「体の焦げ」ともいわれ、糖化が起こると体内でAGEと呼ばれる物質が作られます。AGEは酸化LDLコレステロールと同様に、血管の壁に入り込んでプラークを作ったり、血管内皮細胞のはたらきをさまたげたり、炎症を起こしたりします。
【原因その3 炎症】
炎症とは、体内に侵入した悪い物質と細胞(マクロファージ)が闘って、体内で火事が起こっている状態です。炎症が起こるとその部位が赤く腫れたり痛んだりします。炎症は体のいたるところで起こっています。風邪で熱を出すのも、風邪の菌と白血球が闘って起こる炎症によるものですし、皮膚炎、肺炎なども、皮膚や肺が炎症を起こしているのです。
また、血液が血管にぶつかると血管壁が傷つき炎症が起きます。炎症がすぐに治まれば血管の修復機能で修復されますが、炎症が長引くと正常な細胞が減り、血管内は焼け野原状態に。そのまま放置すれば動脈硬化や血栓を招きます。炎症の度合いは、血液検査のCRPという項目でわかります。基準値は0.30mg/dL以下で、体内で炎症が起きたり、組織細胞に障害が起きたりすると数値が上がります。
【原因その4 ストレス】
私たちは日々ストレスにさらされています。不安、怒りなどの心のストレスだけでなく、睡眠不足や過労など、体のストレスもあります。こういった、日々受け続けるストレスを「慢性ストレス」といい、血管をボロボロにする原因となります。
ストレスを受けると、自律神経を形成する神経系のうち、活動力を高めるといわれている「交感神経」が優位になります。交感神経が頑張っている間、体は緊張状態が続きます。無意識のうちに全身に力が入り、血管はギューッと収縮して細くなります。血液は狭いところを流れることになるため血圧も上がります。
圧力が高いまま血液が流れ続けると、血管の壁は傷つきやすくなります。つまりストレスを受けている間、血管は傷つき続けているのです。やがて修復が追いつかなくなり、動脈硬化を招くことになります。
血管ストレス解消のためには、副交感神経をしっかりはたらかせることが大切です。副交感神経は、睡眠中や入浴中など、リラックスしているときに優位になります。深呼吸やたくさん笑うこともおすすめです。
血管の老化を防ぐためには、血管を強くする食事を摂ること、そして体内に入ってしまった悪いものをデトックスすることが大切です。酸化、糖化、炎症を防ぐ代表的な食材は、ブロッコリーやショウガ、トマト、バナナ、ほうれん草など。抗酸化力の高い食材がおすすめです。
また、炎症を抑えるために有効なのが油(脂質)です。脂質は細胞を包む膜(細胞膜)の成分です。血管内皮細胞も表面は油。油は血管を守ってくれます。血管を守るためには、青魚などに含まれるEPAやDHA、アマニ油、エゴマ油といった「オメガ3系」の油を摂りましょう。これらの油には血管だけでなく、全身の炎症を抑える効果もあります。
デトックスとは、悪いものを体の外に出すことです。私たちは体の中に、腸、腎臓、肝臓といったデトックス器官を備えています。中でも重要なのは腸。不要なものを便として出すだけでなく、腸内の免疫細胞によって外部からの有害物質の侵入を防ぎます。また、肝臓は体内に入り込んだ有害物質を解毒してくれます。
最強のデトックス物質は、脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンです。血管にこびりついたゴミを取り除いたり、傷ついた血管を修復したりします。ただし内臓脂肪が増えるとアディポネクチンは減少するので、太らないことが大切。また、大豆などアディポネクチンを増やしてくれる食べ物を摂ることも有効です。
血管強化のポイントは、よいものを食べ、悪いものを出すことですが、手っ取り早く血管老化を防ぐなら、悪いものを摂らないことも対策の1つ。悪いものの代表は化学物質です。その筆頭がたばこです。食品では、ファストフードやコンビニ食品。多くの添加物が使用されています。
スナック菓子や清涼飲料水も同様。血管をボロボロにしてしまいます。しかも、これらは体に必要な栄養素をほとんど含まないにもかかわらず高カロリーで、肥満の原因になります。肥満はデトックス物質であるアディポネクチンを減らすことはすでに述べましたね。以下に、避けてほしい食品をまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
食べないほうがいいもの
・白砂糖:洋菓子、アイス、清涼飲料水など
・トランス脂肪酸:牛肉、洋菓子、マーガリン、揚げ物など
・リノール酸:サラダ油、マヨネーズなど
・精製炭水化物:白米、小麦粉を使用したパンやうどんなど
血管を強くするためには、食材だけでなく食べ方にもコツがあります。それはタンパク質、野菜、炭水化物の順で食べる「プロテインファースト」という食べ方です。
炭水化物には糖質が含まれます。糖質は体内で分解されてグルコースという糖になり、血液中に送り込まれます。この「血液中のグルコース濃度」を血糖値といいます。炭水化物から食べると、糖が急激に血液中に取り込まれるため、血糖値の急上昇が起ります。血糖値の急上昇は血管老化の大敵です。
また、これまでに、「体にいい」という理由だけで、偏った食材ばかりを摂ってしまったという経験はないでしょうか。たとえば、タンパク質が体にいいからと魚や肉ばかり食べていると、脂質の摂りすぎになることがあります。これは血管にとっては大問題。血管を健康にするには、食べ方そのものを変えることも大切です。
まずは、「プラス食べ」をしないこと。いつもの食事にいい食材を追加するのではなく、調理に使うサラダ油を米油に置き換える、白米を麦ごはんに置き換えるといった「置き換え」の考え方が大切です。
次に、「脂質の多い食べ物は、手のひら1枚分に収める」こと。コンビニ弁当などを見ると、からあげと魚がセットになっているものもあります。これはあきらかに脂質の摂りすぎ。肉や魚は手のひら1枚分以下に収めることを意識しましょう。減らした分、野菜を増やすなどの心がけを。
そして、「1日1青菜」を心がけましょう。抗酸化力のある食材は血管の一番の味方なのに、現代人は圧倒的に野菜が足りていません。1日1つ青菜を摂るだけでも、体は変わります。ぜひ、これらをコンビニやスーパーに行ったときに思い出すようにしてください。
血管年齢は医療機関で調べることができます。動脈の硬さを測定するCAVI(キャビイ)検査、脚の動脈の詰まりを測定するABI(エービーアイ)検査、頸動脈エコーを組み合わせて、血管年齢を導き出します。所要時間は30分で、痛みや副作用はありません。また、血管の炎症を調べるCRP検査や、内臓脂肪のCTを撮って動脈硬化の進行リスクを調べる検査などもあります。可能な限り、定期的に医療機関を受診して、健康診断を受けるようにしましょう。
出典 『最高の食べ方がわかる! 血管・血流の強化書』
イメージ画像 Shutterstock
最近、疲れやすくなったり、頭痛・肩こりが進んだり、ぼーっとすることが増えたりしていませんか?思い当たるフシがある人は、血管が老化しているのかも。運動する習慣がなかったり、睡眠不足やストレス過多など、現代人の生活を続けていると、ある日突然「脳」や「心臓」に重大な症状が!
血管の老化や血流の減少は、残念ながら、かなり進行するまで自覚症状がありません。
そんなことにならないよう、いまからでも食生活を変えてゆけば、健康寿命を延ばすことができるのです。
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