ふとした瞬間にあんなに元気だった父が、あんなにしっかりしていた母が、年をとったな」と思う時がやってきた時。
遠い未来だと思っていた親の介護や看病がそう遠くない未来に迫っていると気づいた時。
急な入院や在宅介護、認知症…
どんな「もしも」が起こりうるのかは誰にも分からないからこそ、「知っておくこと」はとても重要であり、知識を持つことで将来への不安を少なくすることもできます。
「もしも」の時に最善の選択が出来るように、知っておくべきことを今から勉強しておきましょう。
『大切な家族の入院・介護でやるべきことのすべて』から、全5回にわたり連載します。
第1回は、「元気だと思っていた親が突然の入院。分からないことだらけの不安の中、最低限覚えておきたいこと」についてをお話します。
ある日突然親が倒れた、けがをした。
——その日は突然やってきます。その場にいるかもしれないし、誰かからの連絡で入院を知るかもしれません。そんな時に適切な行動がとれる自信があるという人は実はそんなに多くないのではないのでしょうか。
親が病院に運ばれたと連絡をもらったら、入院先の病院名、場所を聞き、できるだけ早く向かいましょう。夜中で交通手段がないときや仕事ですぐに駆け付けられないときは、何時くらいまでに病院へ行けるかを伝えると、待っているほうも安心します。
また、急なことで動転しているでしょうが、入院するとさまざまな手続きが必要です。自分の印鑑と数万円程度の現金を持参しましょう。
●親の保険証
●印鑑
●親のお薬手帳(いつも服用している薬一式を持参)
●現金
□くつ(救急車で運ばれるときに靴は履いていないため)
□スリッパ
□メガネ(使用していたもの)
□コップ
□入れ歯・補聴器(使用していたもの)
□タオル類(タオルケットなども)
□パジャマ
□歯磨きセット
□おむつ(必要な場合) など
※病院によっては、パジャマやタオルは規定のものがレンタルされていたりします。病院に確認してから用意しましょう。
👉前もって、親に保険証などの保管場所を確認しておく。
👉いざというときのために、入院に必要な身の回りのものをバッグに入れておいてもらう(バッグの保管場所は聞いておく)。
病院に搬送され応急処置や検査が行われた後、医師から家族に現在の状態(症状や検査結果)、診断(病名)、治療の方針などについて説明があります。
この説明は誰が受けるのが一番良いのか。何を確認しながら聞くのが良いのか。いきなりだと分かりませんよね。医師の説明を受けるのは、今後、窓口として手続きをしたり、親の意思を医師や看護師に伝えたりする役割を担うキーパーソンが適しています。一般的には親と同居または近居の家族ですが、時間に余裕がある、親との関係が良いなど、長男長女に限らずうまくコミュニケーションが取れる人がよいでしょう。
説明時にまだキーパーソンが決まっていない場合は、病院に駆けつけた家族が医師の説明を聞きます。突然のことで動揺して耳に入らない事もあるので、できれば複数で説明を受けるとよいでしょう。説明を受けるときは必ずメモをとり、専門用語やわからないことは遠慮なく医師に質問することが大切です。
□症状や検査結果、診断(病名)
□どのような治療(手術・医療処置・投薬など)をするのか?
□手術の場合は、麻酔の方法、切開の場所、病巣部の切除法、手術時間など
□その治療をすると、どのような効果があるのか?
□治療後はどのような状態まで回復が見込まれるのか?
□その治療をしないと、どうなるのか?
□治療によって起こり得る合併症は副作用は?起きた場合の対応は?
□ほかの治療法はないのか?(提案されている治療法との比較)
<注意すること>
●わからないことはそのままにせず、医師に質問する。
●メモをとって、あとで確認できるようにする。
●録音したいときは、「ほかの家族にもきちんと伝えたいので」などと伝えて、医師の許可をとる(断られる場合も)。
入院中にかかる費用のこと。
具体的に何にどのくらいかかるのか、大体でも知っておけば不安はぐんと減るのではないでしょうか。
ここでは入院中にかかるお金のギモンにお答えしたいと思います。
入院費用は基本的に親の財布から出します。しかし、親の預金銀行からすぐにお金を引き出せないときは、家族が立て替えることになります。また、親の経済状況によっては、家族が負担しなければならない場合もあるでしょう。
入院中は、医療費のほかに、食事代、必要に応じておむつ代、パジャマやタオルのレンタル代などがかかります。
病院の精算日にまとめて支払うものもありますが、日常使用するおむつはなくなる前に購入して補充しておかなくてはいけない場合もあります。入院期間が長くなれば、それだけお金もかさみます。
お金の問題は、あいまいにしておくとトラブルのもと。親が入院した時点で「誰が払ったり、立て替えたりするのか」あるいは「きょうだいで等分に負担するのか」などを、家族で確認しておきましょう。キーパーソンが、入院中のお金の管理を行うとスムーズです。
□医療費(自己負担額は年齢、所得により異なる)
□食事代
□パジャマやタオルのレンタル代
□おむつ代
□日用品・テレビカード
□交通費
●こんなものも…
□装具代(健康保険が適用されるが、いったん全額を払い、あとで保険のほうから自己負担額を差し引いた額が払い戻される)
□差額ベッド代
※おむつの領収書は捨てずに保管しよう
おむつ代や軽失禁パッド代は、一定の条件を満たせば、医療控除の対象になるので、領収書は必ず保管しておきましょう。その際、領収書の宛名は使用者、つまり親の名前を書いてもらうことが必要です。成人用の紙おむつ、軽失禁パッドであることを明記してもらいましょう。
また、医療費控除が認められるのは、「疾病によりおおむね6カ月以上にわたり寝たきりであり、医師の治療を受けている者のおむつ代」です。医師が発行した「おむつ使用証明書」が必要となります。
入院した際に必要な本当に最低限の知識でも上記のことがあげられます。もちろん他にも手続きの方法やセカンドオピニオンなど、知っておくと安心できる知識は他にもたくさんです。
次回は「親の介護&認知症の始まり」について解説します。
※本記事は、下記出典をもとに一部加筆し、再編集したものです。(新星出版社/室谷)
「親が入院した」という連絡は、ある日、突然やってきます。いざ、というときのために備えておきましょう。