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2025.02.04

うさぎの平均寿命は? どんな費用がかかる? 
うさぎと幸せに暮らすためにチェックしたい8つのポイント

 うさぎと一緒に暮らしてみたいと思っても、果たしてうさぎを迎えることができるかどうか、幸せにしてあげられるのかをよく考える必要があります。迎えてみて初めて直面する事態に苦悩することもあるでしょう。

 

 いざうさぎと暮らし始めて困らないためにはどうしたらいいのでしょうか?

 

 ラビッツ動物病院院長の澤田浩気さんが刊行した『うさぎのための最高のお世話』(新星出版社)より、うさぎと幸せに暮らすためにチェックしておきたい8つのポイントを紹介します。

チェックすべき8つのポイント

【(1) うさぎの寿命】

 うさぎの飼育情報の普及や獣医学の発展に伴ってうさぎの寿命は延びてきており、長寿のうさぎでは15年以上生きることもあります。人には進学・就職・転勤・結婚・出産・子育てなどライフステージの変化があり、うさぎと暮らしていく7~15年という期間の中でそのようなライフステージの変化を迎えることもあるでしょう。今現在はうさぎと暮らすことに問題がなくても、引っ越しに伴ってうさぎと一緒に暮らすことが困難になったり、子育てに精一杯でうさぎのお世話をする時間的・精神的余力が無くなってしまったりと、様々な事情によってうさぎと自身の生活との板挟みで苦悩するケースがよくあります。うさぎがこれから15年を生きるとして、自身のライフスタイルを考えたときに、変わることなく大切にお世話ができそうでしょうか?

 

長寿のうさぎは15年以上生きることも。変わることなく大切にお世話できそうでしょうか

【(2) 費用がかかる】

 うさぎの生活を維持していくためには食費、温度管理のための光熱費、避妊去勢手術、爪切りや健康診断、病気になったときの医療費などそれなりの費用がかかります。季節によっては常時エアコンを稼働し続けなければならない時期もあり、予想以上に光熱費がかさむことでしょう。あなた自身の生活を維持したうえで、うさぎにとって快適な生活も維持していける経済的余力はあるでしょうか?

 

【(3) 運動が必要】
 うさぎの心身の健康を保つためには日々の運動が欠かせません。普段ケージの中で過ごしている場合、うさぎを部屋に放って運動させるスペースが必要です。しかし、うさぎはかじる動物です。紙、段ボール、布、電気コードなどはかじると危険ですので、そういったリスクをすべて排除したうえでうさぎが安全に遊べるスペースを確保できるでしょうか?

 

【(4) 換毛期が大変】

 うさぎには換毛期といって毛の生え換わりで大量に毛が抜ける時期があります。うさぎの毛は細くて軽くふわふわ舞うので部屋のあちこちに漂い、どんなに掃除してもある程度部屋の中に毛が散らばる形になります。そのような状態を許容できない人や、ぜんそくやアレルギーがある人が家族にいる場合は注意が必要です。

 

【(5) 動物病院事情】

 うさぎはエキゾチックアニマル(犬猫や、牛や豚などの産業動物以外の動物の総称)であり、大学の獣医学部では基本的にうさぎの医学については扱われていないか、教育されているとしても手薄なことがほとんどです。一般的に動物病院は犬と猫の診療を行うところであって、専門的にうさぎの診療を行う動物病院は少ないです。都会にはエキゾチックアニマルやうさぎを専門とする動物病院が多少ありますが、地方では皆無な地域も多いです。治療を受けるために他県まで通院しなければならない場合もあります。通える範囲にうさぎを診てもらえる動物病院はあるでしょうか?

 

【(6) うさぎのための時間】

 毎日朝晩のケージの掃除、牧草やペレットの交換、抜け毛のお手入れ、うさぎを部屋に出して遊ばせるまとまった時間など、うさぎのために使う時間が日常的に必要になります。また、健診や病気の診察などで動物病院に連れていく必要もあります。うさぎの病気は緊急疾患で、一分一秒を争う事態になることも多々あります。限られた時間をうさぎのために使う余裕はあるでしょうか? いざというとき、すぐに動物病院に連れていくことはできそうでしょうか?

 

【(7) 家族の理解】

 うさぎを迎えるにあたってご家族の理解は得られているでしょうか? 世の中には動物が苦手な人もいます。また、うさぎにかかる諸々の費用を家計の中から捻出することに対して、家族の中に難色を示す人がいる場合もあります。このようなときに家族間で対立が起こり、関係が悪化してしまうケースがあります。うさぎは繊細で敏感な側面があり、そのような家庭環境ではストレスを抱え病気になることもあります。誰かが我慢している状況でうさぎとの暮らしを維持するのは難しいです。事前に家族とよく話し合いましょう。

 

【(8) 健やかなるときも病めるときも】

 あなたは健やかなるときも病めるときも、うさぎを伴侶とし愛し続けることができますか? ほとんど結婚ですが、うさぎと暮らすということはそういうことです。野生から切り離されて人間社会に取り込まれたうさぎは、人のお世話がなければ生きていけません。たとえ自分が忙しくても体調が悪くても、うさぎが生きていくためには日々のお世話が必要になります。うさぎを生涯にわたって大切にすることができるでしょうか?

 

 このように、うさぎと暮らすためにはクリアしなければならない条件があります。それでも人がうさぎと一緒に暮らしたいと思える原動力は、うさぎへの愛情と共有する時間と空間の価値にあります。共に暮らす中で、人とうさぎの間にはお互いに心地よい理解と距離感が生まれ、かけがえのない存在になっていきます。幸せに暮らすうさぎは人を幸せにします。

 

 うさぎが不幸を回避し幸福になるために差し当たって飼い主さんに覚えておいてほしい重要な事項が、以下の3項目です。

その1 「うさぎの主食」=「牧草」 大量の牧草が必要であること

 地球にはいろいろな草がありますが、人と暮らすうさぎに与える草として適しているのは牧草です。牧草には、繊維質が豊富に含まれ、その繊維質が咀嚼による歯の咬耗(こうもう)を促進して不正咬合を防ぎ、消化管の機能と腸内微生物叢(ちょうないびせいぶつそう)を最適化して様々な病気からうさぎを守ってくれます。牧草は牛や馬の飼料として各地で栽培されているため、市場への供給も安定しています。草食動物であるうさぎの身体は、草を食べることで最適な状態になるようにできています。なので食事に占める牧草の割合を最大にする意識が大切です。

 

(1)大量の牧草を与える(2)残量を評価する(3)半日経ったら全て入れ替える、が基本

その2 温度管理 免疫が正常に働く室温は20~24℃

 うさぎにとって適切な温度とは、うさぎの細胞が正常に働いて機能を正常に維持できる温度です。不適切な温度では不快感があり、免疫をはじめとした細胞の機能が低下して病気の原因になります。適切な温度・湿度は本やWebサイトに様々な数値が紹介されていて、実際どうすればよいのかわかりづらいと思います。現実的に無難な数値として、基本的に室温20~24℃、湿度40~60%をおすすめします。冬季は室温が20℃を下回るころから、夏季は室温が24℃を上回るころから、体調を崩したうさぎの来院が相次ぎますが、温度管理についてアドバイスすると解決することが多くなります。うさぎは暑さも寒さも苦手です。室温はエアコンの性能や人の活動の有無などの諸条件で実際の温度がかなり変動します。うさぎの飼育本には16~26℃の範囲で書かれていることが多いですが、ギリギリ16℃や26℃を目指すと、冬の夜間の冷え込みや夏の昼間の温度上昇時にエアコンの制御が室温に追いつかず体調を崩す場合があります。多少の変化があっても適温を確保できる余力を持たせる意味で、基本的に室温は20~24℃にしておくことをおすすめします。

 

「温度」とはエアコンの設定温度ではなく、室温を温度計で計った「実際の温度」のこと

その3 避妊去勢

 避妊去勢をしていない場合は、様々な疾患のリスクにさらされることになります。雌の場合5~6歳の段階で80%が子宮に腫瘍ができ、加齢とともにさらにリスクは上昇します。中には2歳で子宮の悪性腫瘍にかかってしまう場合もあります。子宮内膜炎でも、静脈瘤を形成して破裂・大出血すると2~3日のうちに致命的になる場合もあります。雄の場合、雌ほど発症リスクは高くありませんが、やはり加齢とともにリスクは高まります。雄のうさぎでは繁殖の欲求がストレスになって食欲不振に陥ることもあります。

 

 避妊去勢手術をすべきかどうかについては様々な意見がありますが、基本的には早期に手術することをおすすめします。未避妊の雌は腫瘍の発生率が高すぎる上に静脈瘤破裂のような緊急事態に陥るリスクが常についてまわります。

 

 雄の場合、発症率は雌よりは低いものの、どの疾患も治療は手術であり、発症するのは大抵中高年になってからです。避妊去勢していないと、複数の疾患にかかる可能性があり、治療のために複数の手術が必要になる場合があります。

 

 年をとってから病気にかかり、年齢的に麻酔のリスクが高まっていてさらに病的な身体で複数の手術に立ち向かうよりも、若くて麻酔のリスクが低いうちに1回の手術で全部予防しておくというのが避妊去勢の考え方です。多くの動物病院で疾患の治療としての手術よりも予防としての避妊去勢手術の費用のほうが安く設定されているため医療費の削減も期待できます。

 

 近年うさぎの寿命は延びており、年齢と共にリスクが高くなる疾患を予防する手段として避妊去勢手術の意義はより高まっています。ラビッツ動物病院では生後8か月齢~1歳頃に避妊去勢手術をすることをおすすめしています。

 

飼い主さんの考えや経験をもとに家族や獣医師とよく相談して納得して決めましょう

 うさぎとの幸せな生活を考えるとき、幸福であるためには不幸ではないという前提も必要です。人と暮らすうさぎは天敵である肉食獣の脅威から逃れ、快適な環境で暮らすことで長寿化していますが、一方で老齢に伴い病気のリスクは増えていきます。また、人と暮らすがゆえの飼育環境や不適切なお世話に起因する病気も起こり得ます。人と暮らすうさぎの幸福はどのような環境を作り、どのようなお世話をするかにかかっています。これからうさぎをお迎えしたいという人だけでなく、既にうさぎと一緒に暮らしている人も、うさぎを幸せにするためにまずはこれまで述べてきた点について改めて考えてみましょう。

うさぎのための最高のお世話
澤田浩気 著/森山標子 イラスト(プロフィールは下記参照)
繊細で、まだまだナゾの多い生きものでありながら、その奥深い魅力で、私たちをとらえてやまないうさぎ。
本書は、うさぎとはそもそもどんな生きものなのか、うさぎの気持ちを理解し、いっしょに幸せに暮らしてもらうための1冊です。


「うさぎは人をどう思っている?」「何を食べさせたら長生きしてもらえるの?」「どれくらい頭がいいの?」
昔から、うさぎは感情表現に乏しいとか、寂しくさせたらダメなどと言われますが、本当のところはどうなのか。
本書は、うさぎたちの本当の気持ちに寄り添い、かれらの行動を理解し、幸せに暮らしてもらえるよううさぎを専門とし、日々うさぎと接している獣医師が、実践的で最新の情報を踏まえ、最高のお世話を紹介します。


これから飼おうと考えている方から、お迎えしたてのビギナーさん、ベテランさんまで読みたくなるうさぎ好きにはたまらない1冊。
うさぎたちのちょっとしたしぐさや素振りが可愛くてたまらないイラストは、
SNSでも大人気、イラストレーター森山標子さんの描きおろしです。
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澤田浩気(サワダヒロキ)

福島県出身の獣医師。2014年にラビッツ動物病院(福島県福島市)を開院。国内外の情報の集積と分析を行い、日々うさぎの診療に従事。趣味はうさぎと遊ぶこととうさぎに邪魔されながらの読書。日本獣医エキゾチックペット学会、日本獣医麻酔外科学会所属。

ラビッツ動物病院HP 
X(旧Twitter)アカウント @RabbitsAC

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森山標子(モリヤマシナコ)

イラストレーター。福島県在住。
うさぎの絵で雑貨や書籍のイラストを手掛けている。
主な著書に「ねむねむ こうさぎ」「こうさぎ ぽーん」(文・麦田あつこ、ブロンズ新社)、
「うさことば辞典」(編・グラフィック社編集部、グラフィック社)、「うさぎ雲といっしょに」(KADOKAWA)がある。
海外のファンも多く、SNSのフォロワー合計数は20万人にのぼる。

森山標子公式ホームページ
Instagram、X(旧Twitter) @schinako
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