医学博士。イシハラクリニック院長。ジョージア共和国科学アカデミー長寿医学会名誉会員。
1948年長崎市生まれ。長崎大学医学部を卒業して血液内科を専攻。同大学院博士課程で「白血球の働きと食事・運動の関係」の論文で医学博士の学位を取得。スイスの自然療法病院、B・ベンナークリニックやモスクワの断食療法病院でガンをはじめとする数々の病気、自然療法を学び、コーカサス地方の長寿村にも長寿食の研究に5回赴く。テレビ、ラジオなどの出演や全国講演でも活躍中。
連載第1回では、体温が1度下がると基礎代謝が落ち、免疫力は30パーセントも下がってしまうことをお話しました。
今回は、「冷え」の原因を解説します(『体を温め、病気を治す』(石原結實著)より)。
体内の余分な水が体を冷やす
雨に濡れると体が冷えて風邪をひき、喉や頭に痛みが生じる、寒い季節に体が冷えると関節が痛む、冷房で冷えすぎると頭痛を起こす……。これらはみな、「冷え」が「痛み」をひきおこしているのです。その「冷え」の原因となっているのが、「水」です。
水は生命維持に不可欠なものですが、体内で過剰に存在すると体の働きに必要な熱を奪ってしまい、体を冷やしてしまうのです。その結果、冷えてしまった体のあちこちに、痛みという形で病気があらわれてしまいます。
現代は「冷え」の原因にあふれています。万病のもととなる「冷え」は、もはや現代病といっても過言ではないのです。
人間の体温の4割以上は筋肉でつくられ、運動で発生した熱は体を温めます。また、筋肉を動かせば発汗しますので、それによって余分な水分を体外に捨てることができます。体を動かせば、熱を発生させて体が温まると同時に、冷やす原因(水)もとりのぞけるのです。
食事と健康の関係を示す言葉に「身土不二(しんどふじ)」があります。「人間と土はひとつのものだから、その土地の旬の食べ物を口にすれば健康になる」という意味です。
人間の生理と食べ物の周期は自然の摂理によって歩調が合っているものでした。北国の料理は体を温める作用を持ち、南国では体を冷やす作用があったのです。
日本はどんな野菜や果物も年中スーパーで簡単に手に入り、国内外のあらゆる料理が楽しめる、恵まれた国ではあります。しかし、季節や気候を無視した食生活は「身土不二」のルールに明らかに反しています。そんな飽食でもたらされたものが「冷え」だったのです。
いまは健康を阻害する元凶のようにいわれている「塩分」ですが、本当にそうでしょうか?塩の体内での働きを考えてみましょう。塩に含まれるナトリウムの吸湿作用によって、塩をとると血液中の水分量が増えます。水分が増えた分、血液が増量し、多くなった血液を体内に循環させるため心臓の負担が大きくなります。そのため、血圧が上昇して「高血圧」といわれる状態になるのです。
さて、東北地方では冬場の保存食に塩が多く使われていました。極寒の冬を乗り切るためには、塩がもつ体を温める作用を利用しなくてはいけなかったのです。東北では高血圧の人が全国に比べて多かったことから「塩分のとりすぎが高血圧の原因」と結論づけられました。
しかし、現在、日本中で塩分を控える傾向にあるものの、高血圧の患者さんは減るどころか増加の傾向にあります。「塩=悪者説」はまちがっているのです。化学的合成塩はおすすめしませんが、天然のミネラルが豊富な自然塩は、神経質にならずにとりいれてください。漢方では塩は体を温めて血を浄化する作用があるとされています。とりすぎていいわけではありませんが、控えすぎもいけないと心得ておきましょう。
血液は臓器を活発に動かす栄養成分を含んでいます。食べすぎると大量の食べ物を消化するため血液がずっと胃腸に集中し、ほかは血液が少なくなってしまいます。胃腸は常に過労状態となり、胃腸以外の部分は常に冷えてしまい、病気に発展するおそれもあります。
「水はカロリーがないから太らない」と、ダイエットとしてミネラルウォーターを大量に飲む人もいるようですが、それはまちがい。水でも太るのです。外に出す量よりも入れる量のほうが多ければ体内に水分が残ってしまうのは当然のこと。
余分な水分は体内の熱を奪い、臓器の働きを悪くします。さらに、水分を体外に排泄するはずの人体の機能も冷えのせいで働きが悪くなり、どんどん水分が体にたまってしまいます。過剰に存在する水分は下半身にたまっていき、足のむくみ、でっぷりとした下腹部の原因になるのです。
――次回(第3回)は、「あなたは”隠れ冷え体質”かチェック!」”を解説します。
※本記事は、下記出典をもとに一部加筆・再編集したものです。(新星出版社/向山)
1948年長崎市生まれ。長崎大学医学部を卒業して血液内科を専攻。同大学院博士課程で「白血球の働きと食事・運動の関係」の論文で医学博士の学位を取得。スイスの自然療法病院、B・ベンナークリニックやモスクワの断食療法病院でガンをはじめとする数々の病気、自然療法を学び、コーカサス地方の長寿村にも長寿食の研究に5回赴く。テレビ、ラジオなどの出演や全国講演でも活躍中。クリニック院長のほか、伊豆で健康増進を目的とする保養所、ヒポクラティック・サナトリウムを運営。ベストセラーとなった『生姜力』(主婦と生活社)、『食べない健康法』(PHP研究所)、『体を温めると病気は必ず治る』(三笠書房)』を含め著書は300冊以上にのぼり、米国、ロシア、ドイツ、フランス、中国、韓国、台湾、タイなどで100冊以上が翻訳されている。(書籍刊行時)