行動経済学は、自身の時間の使い方にも役立ちます。今回は時間と意思決定の関係を解く理論、「時間的選好」についてお話します。
※前回の記事を読みたい方はこちら
👉①人間はどのようなプロセスを経て意思決定しているのか? 【プロスペクト理論】
👉②これを知れば、無駄遣いを減らすことができるかも⁉【メンタルアカウンティング】
「あの時こうしておけばよかった」と後悔してしまうことはよくありますよね。非合理的な人間の行動を研究対象とする行動経済学では、時間と意思決定の関係にも注目しているのです。
Q このような場合、あなたはどうしますか?
◆明日、取引先で大事なプレゼンがあるとする。残業して資料作成をしようと思っていたところ、仲の良い同僚に飲みに誘われた。
A 誘いを断り、仕事を優先して残業する
B 飲みに行く(「明日だけで終わるだろう」と思う)
このような場合、「取引先との約束を守り信頼を積み重ねていくこと」のほうが将来的にはメリット(効用)のほうが高いとわかっていても、多くの人が目の前の「飲みに行く」という楽しみ(効用)を選んでしまいます。実は、人間が効用の大きさを感じ取る時、現在に近いほど大きく感じ、先のことになればなるほど小さく感じます。これを「時間的選好」と呼び、今の効用を過大に評価することを「現在バイアス」と呼びます。勉強や仕事などさまざまな場面で思い当たるところがある人も多いのではないでしょうか。
この場合、年利100%(1年で倍額)になる後者を選ぶのが合理的です。しかし、実際に多くの人が選ぶのは前者なのです。冷静に考えればどちらが合理的かはわかりそうですが、実際には現在バイアスが働き、今もらえる1万円を過大評価してしまいます。人は、今すぐ手に入る効用(お金や楽しみ)に、大きな価値を見出しているのです。
目の前の楽しみを優先してしまいそうなとき、この理論を思い出せば、結果的にはより大きなメリットを手に入れることができるかもしれませんね。
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出典『サクッとわかるビジネス教養 行動経済学』
イラスト 松尾達
本書は上記出典を再編集したものです。(新星出版社/向山)
本書は行動経済学の基本となる考え方をイラスト図解で簡単に示し、それをビジネスや生活に生かすための方法を豊富な実例とともに紹介します。「見るだけで会話・説明ができる」というシリーズコンセプトの通り、この本を読めば行動経済学的な視点で戦略や企画を提案することができるようになります。
著者は『東大教授が教えるヤバいマーケティング』(KADOKAWA)など著書多数の東大教授、阿部誠先生。個人の心理に着目したマーケティング研究の第一人者がおくる、ビジネスパーソンのための行動経済学の本です。
主な著書に『大学4年間のマーケティングが10時間でざっと学べる』『東大教授が教えるヤバいマーケティング』(共にKADOKAWA)、共著書に『(新版)マーケティング・サイエンス入門:市場対応の科学的マネジメント』(有斐閣)などがある。