2020.07.02
🎥動画付き!

知ってるだけでニュースが面白くなる!
「地政学」で、国際情勢を読み解こう!
【前編】

 みなさんは、世界情勢についてどのくらい興味がありますか?

 イギリスのEU(欧州連合)離脱、11月に控えているアメリカの大統領選挙、北方領土問題、沖縄基地の移転問題、竹島や尖閣諸島の問題……。ニュースを見ていると国際情勢に関する話題が、ひっきりなしに目に飛び込んできます。

 

 それに対し、「EU(欧州連合)からイギリスが離脱したけどなんで? 離脱によって何が変わるの?」、「アメリカの大統領が変わると、日本にはどのような影響が出るの?」…というように、ニュースを聞くだけではわからないことも多いのではないでしょうか。

 これらを読み解くためのチカラとなるのが、今回取り上げる「地政学」という学問です。

 世界中の国々が自国の利益を得るために、軍事力と経済力というリアルなパワーを駆使していますが、これらの「国際政治」を、「地理」をもとにして紐解くツール、それが「地政学」です。

 

 刻一刻と変わる国際情勢が、自分たちに関係あることという意識をもって毎日のニュースを読み解くことは、現代人にとってとても重要なこと。

 そこで今回、「サクッとわかるビジネス教養 地政学」より、前編・後編に分けて地政学の基礎知識を解説します。これを読めば明日のニュースの見え方が違うこと間違いナシ! です。

 

地政学を駆使すれば、世界を「コントロール」できる!?

 まずは、地政学を研究する目的に関する知識から身につけていきましょう。

 

 地政学とは、簡単にいうと「国の地理的な条件をもとに、他国との関係性や国際社会での行動を考える」アプローチのこと。

 例えば、海に囲まれ、敵国の大軍が押し寄せるリスクが少ない日本と、内陸国で常に攻め込まれるリスクのあるウズベキスタン(中央アジア)では、地理が大きく違うぶん、防衛戦略も異なるというのは、イメージがわきやすいですよね。

 また、それ以外にも、国際政治やグローバル経済などでの国の行動には、地理的な要素が深くかかわっているんです。

 地政学の最大のメリットは、自国を優位な状況に置きながら、相手国をコントロールするための視点を得られること。地政学を活用すれば、戦争などのリスクの高いことをせずとも、「相手国から原料を安値で買う」などの経済的なコントロールを考えることが可能になるというわけです。

 ですから、地政学とは、国家が「国際紛争や外交で役立つ実践的な学問として地理を研究」するために活用してきた学問なんですね。それを私たち個人が学べば、おのずと国々の本音や目的が見えてくるというわけです。

 

 先ほど紹介した、地政学最大のメリットである”相手をコントロール”するための重要な考え方が、「バランス・オブ・パワー」と「チョーク・ポイント」です。まずは、「バランス・オブ・パワー」から解説していきます。

他国をコントロールする戦略「バランス・オブ・パワー」は、要するに猿山理論

 「バランス・オブ・パワー」とは、日本語にすると”勢力均衡”。突出した強国を作らず、勢力を同等にして秩序を保つという国際関係のメカニズムです。

 これを地政学的に考えると、上位の立場の国が下位の国へ仕掛ける戦略が見えてきます。例えば、1位の国が勢力を増した2位の国に対し、3位以下の国と協力しながら挟み込んで国力を削ぐというもの。2位以下の勢力を均一化し、抵抗を不可能にするという考え方です。いわば、動物園の猿山のボス猿とその他の猿の力関係のようなシンプルな理論です。

 この「バランス・オブ・パワー」で世界を制覇したのが大英帝国(昔のイギリス)です。イギリスは世界中の国と戦って勝ったわけでなく、スペインやナポレオン時代のフランス、ドイツなど、ユーラシア大陸に強大な勢力が登場したときのみ、周辺国と協力しながら戦い、世界を制覇したんです。アメリカは冷戦以降、常にこの「バランス・オブ・パワー」を意識した対外戦略を展開しています。

「チョーク・ポイント」をおさえて国家の命綱である「ルート」を支配する

 「チョーク・ポイント」について、まずは本書籍監修の、奥山真司先生による詳しい解説をご覧ください! チョーク・ポイントがいかに重要な役割を持っているかがわかります。

動画はこちらから

 テキストでもおさらい&補足をします。

「チョーク・ポイント」を理解する前に、まず「ルート」について。ここでいうルートとは、海上交通の道、つまり海路のこと。現在でも国から国、中東やアジアなどエリア間の大規模な物流は海路であり、国家の運営においてルートは命綱です。そして、「チョーク・ポイント」とはこのルートを航行するうえで、絶対に通る海上の関所のこと。陸に囲まれた海峡や補給の関係上必ず立ち寄る場所で、世界に10個ほど存在するといわれています。

 ルートを支配するには、他国のコントロールに直結するチョーク・ポイントを抑える必要があります。別の見方をすれば、他国をコントロールする際、陸海の両方に人員を配置するよりも、チョーク・ポイントをおさえた方が、低コストで大きな影響力を持つことができるんです。

 

 現在、世界の多くのチョーク・ポイントをおさえているのがアメリカ海軍です。アメリカが世界の覇権を握れるのは、チョーク・ポイント、そしてルートを握る海軍の力といえるわけですね。

 

 今回は地政学の基本となる、「バランス・オブ・パワー」、「チョークポイント」を解説しました。基本的な考え方がわかると、「この国のあの動きは○○のためだったのか!」と少しずつわかっていくはず。

 

 次回も引き続き、地政学の基本的な概念について解説します。

※本書は、下記出典を再編集したものです。(新星出版社/大森)

※次回は7月9日に公開予定です。

地政学(サクッとわかる ビジネス教養シリーズ)
奥山真司監修 (プロフィールは下記参照)
急速にグローバル化が進んでいる時代。だからこそ、ビジネスの現場では世界情勢を知らなければなりません。世界情勢を理解し、話をするには「地政学」が必須です!本書は「特別な図解を見るだけで、地政学の会話・説明ができる」ようになります。防衛省の幹部候補生に地政学を教えている、地政学の第一人者「奥山真司」先生が伝授!
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奥山真司(オクヤママサシ)
1972年横浜市生まれ。地政学・戦略学者。戦略学Ph.D.(Strategic Studies)。
国際地政学研究所上席研究員。戦略研究学会編集委員。日本クラウゼヴィッツ学会理事。
カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学(BA)卒業後、英国レディング大学院で、戦略学の第一人者コリン・グレイ博士(レーガン政権の核戦略アドバイザー)に師事。
地政学者の旗手として期待されており、ブログ「地政学を英国で学んだ」は、国内外を問わず多くの専門家からも注目され、最新の国家戦略論を紹介している。
現在、防衛省の幹部学校で地政学や戦略論を教えている。また、国際関係論、戦略学などの翻訳を中心に、セミナーなどで若者に国際政治を教えている。

著書に『地政学 アメリカの世界戦略地図』(五月書房)、『“悪の論理"で世界は動く! 』(李白社)、『世界を変えたいなら一度"武器"を捨ててしまおう』(フォレスト出版)、訳書に『大国政治の悲劇』(ジョン・ミアシャイマー著)、『米国世界戦略の核心』(スティーヴン・ウォルト著)、『進化する地政学』(コリン・グレイ、ジェフリー・スローン編著)、『胎動する地政学』(コリン・グレイ、ジェフリー・スローン編著)、『幻想の平和』(クリストファー・レイン著)、『なぜリーダーはウソをつくのか』(ジョン・ミアシャイマー著、以上、五月書房)、『戦略論の原点』(J・C・ワイリー著)、『平和の地政学』(ニコラス・スパイクマン著)、『戦略の格言』(コリン・グレイ著、以上、芙蓉書房出版)、『インド洋圏が、世界を動かす』(ロバート・カプラン著、インターシフト)がある。

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